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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「なにか面白いことがあるんですか?」
「久々知先輩が踊るつづらを持っているんですか?」
「竹谷先輩とそれを持って逃げているんですね?」
「田村先輩はその中身を探ってるんですね」
あれよという間に断定された三木ヱ門が弁解する暇もなく、伏木蔵と怪士丸がはしゃぎ出した。
「一人で勝手に踊るつづら!」
「すごいスリルとサスペンス~」
「つづらの中身はなあに?」
「子猫か子犬か、オバケか小鬼~」
手を取り合い顔を見合わせその場で足をバタバタさせて、きゃーっと叫んで二人で盛り上がるのを、三木ヱ門は呆気にとられてただ眺めた。
まるで築山での団蔵と左吉の再現を見ているようだ。一年は組があれこれ首を突っ込みたがるのは、まあ「だって一年は組だから」で大抵説明がつくけれど、こましゃくれた一年い組も引っ込み思案な一年ろ組も、目の前に「面白そうなこと」が転がってくるとこうも他愛なく目を輝かせるのか。
それはそれとして、「踊るつづら」なんぞのことは三木ヱ門も知らない。
「残念ながら、そうじゃない」
水を差して悪いがと三木ヱ門が遠慮がちに否定すると、伏木蔵と怪士丸は団蔵と左吉のように潰れはしなかったが、ぴたっと動きを止めてしまった。
呼吸さえ止まっているような妙な緊張感がいたたまれず、三木ヱ門は口早に言葉を続ける。
「ただ僕が久々知先輩に用があるだけで、つづらはそれとは別件なんだ」
「別件?」
作り物のようにかたかたと口を開いた怪士丸が問い返す。
これこれこういう訳でと学級委員長委員会が計上したつづら代にまつわる疑惑をぺらぺら喋ることはできない。が、えーと――と言い淀んだら、きっと本当のことを話すまでじわじわじわじわ攻められる。そう考えた三木ヱ門は咄嗟に、さっき見たことを口にした。
「つづらのような箱のようなものをたくさん積んだ荷車を見かけた」


ひな祭りネタ下げ&ブログ連載を30話分サイトにアップしました。……アバウト半年つづいてる短期集中連載ってどういうこと。


このひと月あまりぐずぐずと微熱が続いて意気が揚がらないこと甚だしく、その割には熱が出るだけで鼻や喉や頭痛はほとんど無傷なのでどうも風邪ではないようだと思っていたら、レアケースの花粉症 らしい です。たぶん。
診療記録を見たら去年のこの時期に同じ状態で内科にかかって「内蔵も血液もすげえ健康、血液が特に中学生並み」と診断されてましたワーイ。免疫系がすげえ健康すぎるのが問題なんだアレルギーってやつは。
もともと平熱が高いので熱があってツラいというわけでもないんですが、こう、脳をトロ火でずううううっと茹でられてるビジュアルが頭に浮かんで消えないのはやっぱり軽く滅入ってるのかもしれない。


と、2日前に書いた内容をつるりと忘れた展開になっていたブログ連載を訂正しつつ考え中です。


喋ったり動いたりしているのを近くで観察していれば、目の前の誰かは三郎の変装だと三木ヱ門でも察しをつけることはできる。遠目だったり、ちらりと見かけるくらいでは、よほど「誰か」らしくない且つ三郎らしい行動でもしていなければ分からない。
しかし五年間もほとんど毎日顔を合わせている勘右衛門なら、ひと目で八左ヱ門か、八左ヱ門の顔をした三郎か見分けられても不思議はない。走る二人を見て笑ったのなら、兵助と三郎(暫定)は急いではいたが、何事かと不安にさせるような緊迫した様子ではなかったのか。
火薬委員会と学級委員長委員会が一緒に慌てるような事態って、なんだろう。
「つづら……」
食草園に潜んでいた三郎が、三木ヱ門が伊作を探していると聞いて「焔硝蔵の方へ向かった」「すぐに追えば捕まえられる」とまるで追い立てるように重ねて言ったのは、からかう振りをして何かから目を逸らさせるためなのか。考えてみれば三郎のその言葉があったから三木ヱ門は伊作が兵助に会いに焔硝蔵へ行ったと考え、委員会の必需品を潤沢に――あるいは安価に買い入れたという共通点をその行動へ当てはめて、火薬委員会と保健委員会の繋がりを疑ったのだ。
伏木蔵の証言で伊作は実際に焔硝蔵へ用事があったことは分かったが、それは火薬委員から何かを受け取るためではなく、薬草を置いて来るためだった。
猿の一件を伊作が伏せても、害虫の侵入を防ぐ草だとでも言えば兵助はそれを認めるだろう。すると保健と火薬は必ずしも秘密を共有している必要はない。
「……に、踊らされてるのか……」
生物委員会が内外の貿易商と伝手を持ったのと同時期に、生物委員会と手を結んでいる保健委員長だけではなく、火薬委員会も必需品をたくさん入手できる販路をたまたま見つけた――という偶然には、素直に頷けない。生物が火薬に伝手を分けたと考えるほうが自然であるように思えるが、公にできない「やんごとなき猿」が関わっている以上、そこには何らかの利害関係があるはずだ。
しかし委員長代理同士が同級生で友人ということ以外に、生物と火薬をどう結びつければいい。
その仲介に当たったのは保健委員長ではなく、同じく五年生で、学園の雑事を取り仕切る学級委員長委員会の三郎だったのか?
「……中身は、なんだ」
学級委員長委員会も猿の隠蔽に関わっていたなら、その役割はなんだ?
ぱちりと瞬きして三木ヱ門がふと我に返ると、伏木蔵と怪士丸が傾いた首をそのままに、同じくぱちぱちと目を瞬いた。
「踊るつづらの中身は猫だと思います」
「僕はツクモガミだと思います」
我知らずぶつぶつ言っていたことに気付き、うんそうだねと三木ヱ門が生返事をすると、二人の顔がぱっと明るくなった。


「竹谷先輩と?」
予想外の名前が出て来た。
と言うことは、三木ヱ門の目の前で屋根から転がり落ちてた八左ヱ門と、一年生たちが見た焔硝蔵から駆けて来る八左ヱ門のどちらかは三郎だ。八左ヱ門に変装している新たな第三者がいる可能性もあるが、他人の顔を借りてうろつく趣味のある人物は今のところ学園にひとりしかいないから、目をつぶる。
「どんな様子だった。慌てていたか、そうでもなかったか」
「うーんと……遊んでいるふうには見えなかったです。でも、尾浜先輩は笑ってらっしゃいました。"またやってる"って」
五年生の間で鬼ごっこが流行っているんですかねえと、冗談とも本気ともつかない口調で伏木蔵が言う。
三木ヱ門が口を開く前に怪士丸が異議を唱えた。
「あれ、"まだやってる"っておっしゃったんじゃなかった?」
「え? "また"でしょ?」
またやってる――なら、兵助と八左ヱ門の二人が駆け回る光景は勘右衛門にとっては珍しくない、ということだ。五年生は比較的落ち着きのある学年ではあるが、それでもなにしろ14歳なのだから、同級生同士ならふざけ合ってはしゃぐこともあるだろう。
まだやってる――なら、今日は朝から珍しく八左ヱ門に変装していた三郎がまだそのままでいる、いつまでやってんだあいつ、という意味にも取れる。
「……こっちかな」
顎に手を当てて三木ヱ門が独り言を洩らすと、伏木蔵と怪士丸は左右対称にきょとんと首を傾げた。



右手と左手の人差し指を立てて、歌うように節を付けて伏木蔵が言う。
「鎮痛膏・改って。戦闘機じゃあるまいし」
「正確に言うと改・三号です」
基本になる消炎鎮痛薬の調合は、知っていれば便利だからと新野が保健委員に教えてくれた。でも、そこへ更に何を加えたら秘薬"鎮痛膏"の完成なのかは、新野だけの秘密だ。
研究熱心な保健委員長は自分なりに工夫してその基本の調合に薬種を組み合わせ、何度か試作品を作った。
作った薬は実際に使用して効果のほどを確かめる必要があるが、万一のことを考えると、元の身体は十二分に健康であるほうが望ましい。
そして伊作の近くには、多少の怪我は怪我とも認識しなくなったくらい頑健な学園きっての武闘派がいる。
「食満先輩が使ったら体中の骨が痒くなったっていう試薬は、それじゃ改・一号か」
薬のにおいを嗅いでらしくないほどに怯え、完全に腰が引けて乱太郎から逃げ回っていた留三郎の姿を思い出して三木ヱ門が言うと、今度は怪士丸が「ひえー」と裏返った声を上げた。
「骨なんてどうやっても掻けないのに、痒いんですか」
「だから生き地獄だったとおっしゃていた」
「それは二号です。一号は、調合した薬種を馴染ませるために保管してる間に爆発したんですって」
「なんで!?」
期せずして三木ヱ門と怪士丸の声が揃った。伏木蔵はあっさり「さあ」と受け流す。
黒色火薬をうっかり混ぜ込んだのか、まったく新しいやり方で新種の火薬を作り出してしまったのか。どちらにしても、少し時機がずれていたら、被験者――いや、被害者か――は怪我を治す為の膏薬でさらに大怪我をしたかもしれないということだ。
保健委員長の不運波及力、恐るべし。これはもう一種の兵器だ。
「一号より二号の方が危険度は下がってるから、二号の次の三号はもし副作用があってもそんなにヒドイことにはならないと思います。たぶん」
それにちゃんと新野先生お手製のを使っていたなら何にも問題はないですよと、呑気そうな口調で伏木蔵が言う。
しかし、二者択一なら間違った方へ、「ちゃんと」ではない方へ手を伸ばしてしまうのが保健委員ではないか?
……ちょっと食満先輩に悪いことをしたかもしれない、と思ったが、三木ヱ門は深く考えるのはやめた。
「えーと……ところで、久々知先輩が校舎の方へ走っていらしたのを見ていないか」
そう尋ねると、見ました見ましたと一年生たちが口々に言った。蜘蛛梯子を窓枠に取り付ける時に校舎の外が見えて、そしたら久々知先輩が焔硝蔵の方から凄い速さで走って来ました。
「竹谷先輩とご一緒に」


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