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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「ああ、えーと、ありがとう……? って、何に対してのお礼なんだ?」
どうやってそれを知ったのかを脇に置けば、喜八郎の言うピンチがは組の教室で五年生に取り囲まれていたことなら、それは自力で脱出したのだ。 全く要領を得ない三木ヱ門の顔に、喜八郎がピッと指を向けた。
「今からするよ」
「人を指さすんじゃない」
「違う。後ろ」
「あ、五年生だ」
異界妖号に説教していた団蔵が喜八郎の指した方を見て呑気に言う。
ぎょっとして振り返った三木ヱ門は、丁度こちらに気付いたらしい三郎とバチリと視線がぶつかって、飛び上がりそうになった。
三郎が別の方角を見回していた雷蔵と兵助に何か話し掛ける。2人もこちらを確認したのが見えた。
「あれ、竹谷先輩?」
「中身は鉢屋先輩だけど言ってる場合か! 団蔵、逃げるぞ!」
異様に早い小走りで近付いて来る五年生を前に悠長に質問してくる喜八郎に地団駄を踏みたい気分になりつつ、三木ヱ門は団蔵に叫んだ。
団蔵と異界妖号が揃って首を曲げる。
「そう言えばいつの間に久々知先輩と、鉢屋先輩? が、加わってたんですか?」
「そうか、あの状況で寝てたんだったなお前は」
「はい注目ー。2人とも、もうちょっと馬にくっついてて」
不意に喜八郎が手を叩いた。いつ拾ったのか小枝を一本右手に握っている。 言われるまでもなく今更異界妖号の影に隠れようと試みていた三木ヱ門は、一歩前に出た喜八郎がスッとその場にしゃがむのを見た。
「ほい」
気の抜ける掛け声と共に小枝で地面を叩く。
途端、五年生たちの足元が崩壊した。
目を瞠る暇もなく、驚愕混じりの悲鳴は次々と地面に吸い込まれ、ややあってから重い音が三回、続けざまに耳に届く。
「感謝したまえよ」
「……ありがとう」
そっくりかえる喜八郎に素直に頭を下げると、喜八郎は得意気に肩をそびやかした。


「やほー」
異界妖号に近付いて足を緩めた三木ヱ門と団蔵に、手綱を持った喜八郎が呑気に手を振った。反対の手でぽんぽんと異界妖号の首を叩きながら言う。
「この子、逃げた馬借便の馬でしょう」
「そうです。捕まえてくださったんですか、ありがとうございます」
「いや、ここでひとりで立ってるのを僕が見つけただけ。正門まで連れて行こうと思ってたんだけどさ。団蔵に預けちゃっていい?」
「馬……、だけか?」
鞍の隙間に隠れていないか気を付けて見回してみても、小猿の姿は影も形もない。慎重に三木ヱ門が尋ねると、喜八郎は「馬借の人は近くにいなかった」と、やや見当違いのことを答えた。
と言うことは、小猿はここに異界妖号を乗り捨てて移動したのか。
南蛮の猿は乗馬もこなすとは――と思わず感心しかけて、そう言えば最近どこかで似たような話を聞いたなと、ふと思い出した。どこで誰から聞いたんだっけ?
まぁいいか。それは本題じゃないし。
「綾部先輩、今日は穴を掘らないんですか?」
手綱を受け取った団蔵が地面を掻く真似をする。踏鋤も手鋤も持っていない喜八郎の姿は珍しいのだ。
「宿題があるんだよねー」
異界妖号の鼻面をぐるぐると撫でていた喜八郎がつまらなそうに言う。
「まだ手を付けてないのか」
アナンダ1号・改の底を抜いて地下道へ降って来たあと、宿題をすると言って長屋の方角へ立ち去ったはずだ。さてはあれからまたフラフラと穴掘りに行ったのかと呆れる三木ヱ門に、喜八郎ぐっと顔を突き出し、眉を険しく逆八の字にした。
「やろうとしたんだよ。部屋に戻ってさ。そうしたら急に立花先輩の指令が飛んできて、三木ヱ門がピンチだから見て来いって」
「へ?」
「感謝したまえよ」
なぜそこで立花先輩が、と目を白黒させる三木ヱ門に向かって、喜八郎は偉そうにふんぞり返った。

「富松作兵衛です。三之助が急に胸を触ってきて"膨らんでて良かった"とか言うんだけど何の嫌がらせだこれ」

夏企画の「夢十夜」を更新しました。
……ちょいと悩み事が発生しました。



※ちょっと今回の話の核心に触れるので、本編より先にこちらをご覧になっている方はご注意下さい。



注意を書いた時点で落ちバレになってしまうのと、直接的な描写はしていないのとで普通に掲載しましたが、こういうのは「死ネタ注意」の但し書きをするべきなんでしょうか。原作で名有りキャラが死んでしまうのはぜっっったいに有り得ない事態なので、それが好きなキャラであればあるほど仄めかす程度でも不快になる方はいらっしゃるかと思うのです。この手のネタを公開したことがないので、どの辺で注意(あり/なし)の線引したら良いのやら…。

「普段はやらないことをやります」と宣言した時点で、当サイトの傾向を把握して下さっている方々には「やらかすこと」を予測して頂けるととっても嬉しいなあと思いつつ、学生さんが夏休みのせいか最近は有り難くも一見さんもおいでになるのでびくぶる。
とりあえず、やらかした! と思った時はトップに※閲覧注意を付けます。
チキンハートだよウワー。


「何を止めるんだ?」
「……なんでしょうね? 食満先輩から預かった包みを田村先輩に渡しに行く時も、僕らは医務室で待ってろと言われると思ったんですけど、2人とも一緒に来いって」
結局包みは渡しそびれ、その包みをどうするのかと一年生に問われて沈黙した文次郎は、すぐに医務室へ戻ろうとせず辺りを歩き回っていたらしい。
左門ほどではないが、文次郎もぐだぐだと迷うことをしない果断実行型だ。どう見ても無目的な彷徨と、何を尋ねても生返事ばかりの挙動不審振りを団蔵と左吉が訝しみ始めた時、突然「田村を手伝って来い」と団蔵に命じた。
「それならさっきそう仰れば良かったのに、変だなあ。とは思いました」
全力に近い速さで走りながら息も切らさず、団蔵が説明する。
「確かに、分かんないな」
「竹谷先輩が会計委員に協力してくださる訳じゃないんですよね?」
「それはない。左門は自室に引っ込んでるし、僕は単独で動いていたんだが、一人じゃねぇんだろとも仰ったし……」
「あ、異界妖号!」
前方を指差して団蔵が大声を上げた。
はっと前を見れば、まだ興奮冷めやらぬ様子の異界妖号が土を掻いたり長い尾を振り立てたりしながら、それでも大人しく築地塀の側に佇んでいる。精一杯目を凝らしてみるが、その首っ玉にしがみついている小猿の姿は見当たらない。
その代わり、異界妖号の向こう側から手綱を掴んだ人影がひょいと現れた。

咄嗟に団蔵の腕を引っ張り、思い切り横へ放り投げた。
「伏せ」
ろ! と言い終わる前に、重い地響きと共に旋風が鼻先を駆け抜ける。舞い上がる土埃と吹き乱される髪から両腕で顔を庇いながら見えたのは、疾走する一頭の馬だった。
清八の異界妖号だ。まだひとりでうろついていたのか、鞍上に手綱を取る乗り手はいな――
三木ヱ門は目を見開いた。
埋もれていた茂みからひょっこり顔を出した団蔵が感心した声を上げる。
「おお、凄い。完璧なモンキースタイルだ」
「じゃなくて、本物の猿だ!」
そう叫び、何を考える暇もなく、三木ヱ門は異界妖号のあとを追って駆け出した。
馬のたてがみを掴んで首元に器用にちょこんと座っていたのは、見たこともない姿の、左門曰く「猫みたいな変な顔」の、手のひらにさえ乗りそうに小さな生き物だった。
あれこそが生物委員会がてんてこ舞いさせられている、目下脱走中の"御猿様"に違いない!
「今のリスみたいな猫みたいなの、猿なんですか?」
ものも言わず走り出した三木ヱ門を律儀に追いかけて、団蔵が不思議そうに尋ねる。
……そう言えば一年生に小猿の一件は話していないんだった。
あんな珍しい生き物をばっちり見てしまったあとで、「気にするな」で一蹴できる訳がない。現に団蔵の顔にはみるみるうちに好奇心があふれ始めている。
なので、強引に話題を逸らした。
「潮江先輩は、左吉と医務室へ戻られたんじゃないのか」
「そのはずです。でも、まだハイカイしてらっしゃるかもしれません」
「俳諧?」
いつから委員長は歌詠みになったんだ。
「徘徊です。うろつき回るほう」
「そっちか。――なんで?」
「ぶつぶつ仰ってたけどよく分かんないです。それに、僕と左吉は抑止力だって」

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