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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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真面目な三年生を悩みの無限回廊に陥らせた朴念仁はきょとんとして、指先で額の包帯の下をくるくる掻いた。
「田村がそう言うのならいいけどさ。とにかくその、首に一撃を入れる寸前に、あの野郎がエライことを叫んだ」

『俺の後輩をたぶらかしやがって!』

顎が下がりっぱなしの口の中が乾き、瞬きを忘れた目がぴりぴりと痛み始めるまで、三木ヱ門はたっぷり絶句した。
「何がどうしてそうなった、んですか……訳が分からない」
「"チーム牡羊座"のことだ。多分な。誰かがどこかでおかしな説明を入れたんだろ」
「……きり丸、だ」
焔硝蔵に立ち寄ったあと行き先に迷っているところに、山本から解放された文次郎と出くわした。そこへきり丸も来て、「三木ヱ門と留三郎が皆に内緒で面白そうなことをしていると乱太郎に聞いた」と、チーム牡羊座の入会権を主張した――
その時にきり丸は「牡羊座だけの秘密結社」などと物騒なことを言ったのではなかったっけ。
思い返してみれば、あのやり取りの後から文次郎の態度が少しおかしくなった気がする。
「俺がお前を籠絡した、と取られるのはどっちにとっても失礼な話だけど、つるんでたのは確かだからな」
「つるむ、とも違うような気がしますけど」
相互利用とか一時共闘とか、もう少し殺伐とした言葉のほうが合っている。何しろ最初は「知っていることを全て吐け」という脅迫だったのだから。
「何にしろ、奴からしたら、喧嘩相手が自分の後輩と親しげにしてるのは面白くねえだろうよ」

「田村三木ヱ門です。滝夜叉丸がものすごく睨んできたあとに八幡様のお札をくれました。これって何かの呪いですか」

「夢十夜」第五話更新しました。
もう8月も終わると言うにやっと半分。ことしの残暑は10月まで続く見込みらしいので、暑い間は夏の延長戦ということにしてまだやります。

夏休みの宿題が8月31日までに終わらなくて「一番最初の授業までに仕上がればセーフ!!」と開き直った時の感覚…。
始業式の翌日から3日間「期初めテスト」が定期考査としてあったんですようちの高校。勿論中間期末や模試もあるので期間が短い三学期は怒涛のテストラッシュ。


これまた分かりにくい話になった感がありますが、滝夜叉丸が会ったのは少し未来の戦で戦死した(※ネタバレ・要反転)三木ヱ門です。だから背が高いし力も強い。
本来なら行き来できないはずの場所を繋ぐ橋は特殊な"場"で、橋の裏には異界があるんだそうですよ。現代でも。
橋の裏側って身近な割にはあまりじっくりと見る機会のないものですが、見上げてみると何かが「いる」のかもねー。


「まあ、聞けよ」
へらりと留三郎が笑う。
害意はなさそうだが、かと言って何かを面白がっているような笑みでもない。しいて言うなら、笑うしかないからその顔をした、という感じだ。
「医務室に来るなり、文次郎が目の色変えて突っかかってきやがってな」
「あー……その辺、団蔵からも聞きました」
伏せっている大怪我人を布団から引きずり出したとやら。
「で――奴が言うことには、俺はお前をたぶらかしたんだとよ」
「はっ!?」
「あ、タクラマカンじゃなかったんだ」
声を裏返す三木ヱ門の横で、「そうか"たぶらかす"か」と団蔵が呑気に納得顔をする。
目も口も開きっぱなしで二の句が継げない三木ヱ門をよそに、首筋をひと撫でして留三郎は続ける。
「言い掛かり、と言うより誤解だが、しかし思い当たることが無いでもなかった」
用具委員の一年生を連れて医務室へ来た作兵衛から受け取った伝言で、三木ヱ門とのいざこざが解決したことは察した。
となると、作兵衛に見せて問い質すつもりだった小さな飾りを、留三郎が持っている理由がない。
早いところ三木ヱ門に返したほうがいいのは承知だが、今の自分の状態ではあまりうろつくこともできないし、会ったら渡してくれと適当な誰かに頼んでいいものとも思えない。
そこで、文次郎と揉み合った弾みで懐から包みが滑り落ちたのを幸い、こいつならまあ大丈夫だろうと「これを田村に」と頼んでみたら。
「間髪入れずラリアットが入った」
そこから後は正直良く覚えていない、と留三郎は潤んだ目をしばしばさせる。
「そう言えば"朴念仁"って何の符丁なんだ。弱った心に突き刺さったぞ」
「……目的は達しましたのでお気になさらず」

「その有り様で、よく善法寺先輩が出歩きを許可なさいましたね」
「俺が自分の意志で出歩くのに伊作の許可なんていらねえだろ」
伊作がやすやすと満身創痍の人間を医務室から出すとは思えない。しかし、懸念いっぱいに尋ねる団蔵へ軽く言い返す留三郎は、なぜそんなことを問われるのかまるで分からない、という表情をしている。
治療を放棄したり怠けたりした時の伊作は怖い。普段の温厚さは彼方へ消し飛び、相手が誰であろうと魂が縮み上がるような雷を落とすと言うのに、同級生の留三郎がそれを知らないはずがない。
熱のせいで尋常な判断ができなくなっている……のか?
だめだこりゃ、と三木ヱ門は思わず額を抑えた。面倒を避けたくて敢えて医務室へ向かわなかったのに、面倒の方からご丁寧に出向いてきた。
「――それに伊作は今、医務室にいないし」
「へっ!?」
留三郎が付け加えた一言に、まさか文次郎の訊問から逃げるつもりなのかと団蔵が声を裏返す。
「ど、どこへ行かれたんです? ご存知ですか?」
「水を汲みに行った。当番が帰って来なくて、水瓶が空っぽなんだと」
「あ……、数馬、まだ戻れないんだ」
図書委員のきり丸と久作と一緒に、返本のつづらを満載した荷車を押してすっ飛んでいくのをだいぶ前に見かけた。数馬がその騒ぎに巻き込まれた一部始終を伏木蔵たちから聞いていた三木ヱ門が呟くと、留三郎は首をかしげようとして、痛そうに眉をしかめた。
「数馬がどうとかは知らないけど、伊作は追っ付け医務室に戻るだろ。絶対にここを離れるなって文次郎に釘を刺されてた――っと、そう言や鍛錬バカは一緒じゃないのか」
「……用があって、探しているところです」
「ん? ……あれ、団蔵と左吉を連れて田村を探しに出て行ったんだよな。で、田村は団蔵とここにいるのに、あとの2人はどこ行ったんだ? あの手拭いの包みを文次郎に預けたんだが、受け取っていないのか?」
「あー、えーと」
質問を重ねてくる留三郎に、三木ヱ門は説明に困って口ごもる。
一度顔を合わせて別れた後に団蔵だけ再合流しましたと言えば簡単なのだが、そうなった経緯が三木ヱ門自身にも今ひとつ分からないから、ややこしい。
「チーム牡羊座」
「はい?」
ぼそっと留三郎が言い、三木ヱ門は目を瞬いた。
「俺はな、お前の先輩に、俺が不埒者みたいな言い方をされたぞ」
「はい?」

どこからともなく声がした。
三木ヱ門が団蔵を見ると、団蔵はぶるぶると首を振り、逆にもの問いたげな表情で見返してきた。今度は三木ヱ門が否定の仕草をして、二人同時に首を傾げ、そろって異界妖号に目を向ける。
「……露骨にとぼけられるとさすがに傷つくなぁ」
異界妖号の逆方向から苦笑いの声がかかり、三木ヱ門は溜息ひとつついて振り返った。
「今日は店仕舞いではなかったんですか」
「店を閉めたのなら店主は出歩いたっていいだろ」
よく分からない屁理屈を言って、留三郎がひょこひょこと歩いて近付いて来る。右足を軽く引きずっているのを妙に思ってよく見れば、どうやらがっちり固定されているらしく、膝が全く曲がっていない。
他にも首から腕から両手から、衣服の外に見えている部分はほとんどが包帯まみれだ。
「タソガレドキの忍び組頭とやらのような風体になられましたね」
「一緒にするなよ。顔はほぼ全開だぞ、俺は」
左目の目尻の上辺りで十字に交差する包帯を指さし、留三郎が主張する。確かその辺りにひどい打撲痕があったなと思いつつじっと顔色を窺ってみると、ほんのり赤みがさしている上、目に水の膜が張っているようにさえ見える。
「……あの、熱がおありなのではありませんでしたっけ。安静になさったほうがよろしいのでは」
留三郎の涙目に団蔵も気付いたらしい。控えめに自制を促すが、留三郎はそれをどこか浮ついた調子でからからと笑い飛ばす。
「乱太郎と左近の治療で小半刻ばっかり意識がぶっ飛んでたから、それで休養は十分だ」
それは気絶というのではないだろうか。確かに、気絶と睡眠の違いは導入部だけのような気もするが。
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