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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「海松万寿烏です。只今逃走中ですが風魔の忍たまが殺気全開で怖えええええ」


2020年には何歳だと考えてズーンと来た。
「夢十夜」六話目、やっと更新しました。
潮の干満と月の満ち欠けの関係を調べていたら手間がかかったと言い訳させて下さい。
その間に8月は終わり気候は変わり東京は五輪開催が決定した…。圧倒的優位と報道されてたマドリードが一次投票で落ちるとは分からないもんだ。


今回の話にはちょっと自家設定が入っています。

風魔流忍術学校は足柄山にあると明記されていますが、風魔忍者は戦国大名の後北条氏に仕えていたとされているので、忍者の集落は足柄山~小田原あたりの広範に散在していると想定しました。なもんで舞台が海辺になってます。
与四郎の訛りは 投げた。

あとは関係ない話(続き以下に隠します)。


いらない紙を集めて、漉き返し紙を作って、売る。
だから事務室に大量の反古紙があると聞いて喜んだ。絶対に部外者の目に触れてはならない書類の書き損じでもなければ、あとは捨てるだけのような紙は、学園内には案外少ないからだ。
誰も損をしないし誰の迷惑にもならない、いい考えだ。
が。
「漉き返し紙を売って儲けた額の、申告があった覚えがない……な」
「あ」
きり丸が思わずのように久作の顔を見るが、久作は思い切りしかめっ面をした。
申告漏れ疑いを口にした会計委員の四年生にもその顔を向ける。
「今のところ利益と言えるほどの利益になってないんです。手間賃があると仮定したら、差し引きでぎりぎり黒字になるくらい」
それでも会計委員会に知らせておかないといけませんかと、やや挑戦的な口調で言う。
学園から支給される予算の何割かに相当するほどの利益が上がっていれば、資金力があるとみなされて、その分予算を減らされる。しかしまだそこまでの段階ではないし、今後安定した収入源になるとは確定していない。
その辺りを心配しているのだろうと察しはついたが、三木ヱ門はちょっと言葉に困った。
派手に儲けたのでもない限りは構わない――とは、会計委員の口からは言い辛い。しかし、こんなことをやってますと聞いてしまったからには、見ざる聞かざるで目こぼしする訳にはいかない。
こういう駆け引きは委員長の得手だ。自分にはまだ、荷が重い。

「……一体、どうやって儲けるんだ?」
「それはですねー。僕の人脈が物を言います」
無意識に疑問を口にしたことに気付かなかった三木ヱ門は、急にきり丸が得々と説明を始めたので、思わずきょとんとした。
それを話しちゃうのか?
久作は、と見れば、少し渋い顔できり丸を斜に眺めているが止める様子はない。それどころか、三木ヱ門の訝しげな視線に何を思ったのか、ぐいと顎を反らして校舎のある方へ向けた。
「きり丸は偉そうなこと言ってるけど、ホントは雷蔵先輩の大雑把が炸裂したのがきっかけなんですよ」
「大雑把の結果、紙が溶けることになったのか?」
「溶けたと言うか、溶かしたと言うか……。本の破れを接ぐのに使う糊を、大きい傷も小さい傷もみんな同じ太さの筆でぺたぺたやったから、紙が糊の水分に負けてかえって穴を広げちゃったのがあって、」
「そうなっちゃうと貼り合わせられないから別の紙で埋めるんです」
話を横取りされたきり丸が負けじと割って入る。
補修するべき本の傷みを悪化させた雷蔵は、委員長に叱られつつ破れてしまった本と同じ質感の紙を大わらわで探した見つからず、物置小屋から調達した古紙で漉き返し紙を作って間に合わせたのだと言う。それはまだ雀躍集のせいで予算を使い切られるより前、夏頃の話で、その後は何ということもなく忘れられていた。
「――それを今回の予算危機に面して思い出したのが僕です!」
「漉き返し紙を作ること自体は、図書委員会ではよくやってるんですけどね。それを売ることまでは確かに考えつかなかった」
胸を張るきり丸に冷や水をかけるようなことを言いながら、久作はさらっと重要な発言をした。

残念そうに久作が言い、その横できり丸がうんうんと頷く。
あの大暴走は自伝を置き去りにして逃げた突庵に追いつくためだけではなく、辛抱の切れたきり丸はじめ図書委員が「もうこれ溶かしちゃおう」と腕まくりする前に、大急ぎで手元から離したかったから、か。
「儲け話を前にして良識が吹っ飛ぶって、お前……きり丸に毒されてるなあ」
「……若干自覚してます、よ」
「毒とは失礼な。使いみちのないものは工夫して使えるものにする! これ、」
「ドケチエ?」
先回りした三木ヱ門に首を振り、きり丸は威張り顔でにんまりした。
「生活の知恵です」
「主婦か」
あまり捻りのない突っ込みをしつつ、内心で首をひねる。
使い回しの利かない反古紙を溶かして使えるものにする――とは言っても、では溶けた紙で何からできるのかと考えると、「紙」しか思い付かない。いわゆる漉き返し紙、再生紙の類だが、元々書かれていた文字や絵の墨の色が混ざるから真白にならず、価値もそれほど高くならない。
だとしたら、そこは薄利多売で補うのか? 元手がかからないのと、作業をする図書委員の人件費は無視できるから、案外利益になるのか?

こちらが穿って見ていただけで、実は内緒にするような話ではなかったとか? いや、それにしては雷蔵の態度はおかしかった。裏紙か落し紙にするほか使い道のない反古紙を使って儲ける――言い換えれば金を稼げる、となると、やはり紙買おうに横流しの線が怪しい。
でも、学園内の文書が外部へ出て行くのがまずいことぐらい、一・二年生だって承知しているはずだ。
それでいて、部外者の三木ヱ門がいる場でこの浮かれっぷり。
……分からない。
分からないけれど、ここで踏み込んでみない手はない。
「"これ"って、誰の発想なんだ?」
いかにも感心しているそぶりで、わざと主語を曖昧にして尋ねてみる。
きゃいきゃい騒いでいる所へ水を差された久作はふと真顔になったが、きり丸は元気良く右手を上げた。
「僕です!」
得意気に言う。
「ふうん。……よく思いついたものだ」
「使えるものは使える限り形を変えても使う! どケチの基本です」
と言うことは、大量の反古紙を他の何かに変えるのか。元が紙だけにあまり広い用途には発展できなそうだが。
「お前のせこい知恵も役に立つことがあるんだな。本にまとめて売り出したらどうだ? きっと良く売れるぞ」
「んんんー……魅力的な提案ですけど、ドケチエはあんまり言い触らすもんじゃないんです」
どけちえ。どケチの知恵か、なるほど。
「田村先輩、こいつを焚き付けないでくださいよ。自費出版はもう懲りました」
久作が口を尖らせる。
「突庵先生が置いて行っちゃった本もそうだったし……、きり丸の理性が保っているうちに返せて良かったですよ。学園長先生のお友達の本を反古紙扱いで溶かしたら、さすがに大問題ですもん」
「溶かす――んだ」
「大量だったから、返しちゃうのも勿体なかったけど」

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