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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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写真表示サイズの確認テストです。
2013.11.30(SAT) 横浜F・マリノス-アルビレックス新潟 (日産スタジアム)
  
↑左:ゴール裏からピッチを見た光景 右:新潟サイドに攻め上がる横浜
↓CKを蹴る中村俊輔選手


原寸大だと記事枠から飛び出すのかー。



↓おまけに兵助ホイホイ

「田村がうろうろしていたのは委員会活動の一環なのだろう? なら、報告を聞かなければ意味がないではないか」
そんなことを言い出した動機はともかく、仙蔵がもっともなことを言う。
学園一クールで落ち着いているという評判だけど立花先輩って意外と面白がり屋なんだ、と三木ヱ門が目をぱちぱちさせているのを横目に、文次郎は無愛想の度を一層増して答える。
「聞くべきことは聞いた」
「聞きたいことは聞いていないという顔だが」
「余分の情報はいらねえ」
「へぇ~」
軽く仰け反った仙蔵が裏返り気味の声を出した。珍しく悪乗りしたふうの芝居臭い態度だが、驚いたのは本当らしく、姿勢を戻したあとはまじまじと文次郎の顔を眺めている。
真正面からばっちり視線を合わせられた文次郎はまごつく様子もなく、顎を引いて敢然とそれを睨み返す。
「田村」
文次郎と見合ったまま仙蔵が呼んだ。
微かに笑みを含んだ声音に警戒しつつ、三木ヱ門は「はい」と返事をして背中を伸ばす。
「お前は一体どんな手管を持っているんだ?」
「て、てくだ?」
「この鍛錬バカが」
ついと三木ヱ門に顔を向け、仙蔵は手を上げて文次郎を指差した。
「こうも人に"甘い"のは、この六年間でもそうそう見たことがない」
どうやってこいつを蕩かしたんだと、からかう気満々で大真面目な顔をする仙蔵の手を、文次郎が叩き落とした。
「何をする、痛いじゃないか」
「人を指差すなと何度言えば分かるんだよ、お前らは!」
「本題はそこじゃないだろう? 耳のふちが赤いぞ」
「んなっ」
「つまり田村を信用してるんだよねえ」
妙にしみじみと伊作が言い、ゆうらりと首をもたげ三木ヱ門を見て、「おや、こっちもカラスウリだ」と笑った。

仙蔵が間諜のすずめをほうぼうへ放っていると知っても、それが不愉快だと言って手当たり次第にすずめを討ち取るほど文次郎は短慮ではない、と思う。
しかし自分の口から忍雀の話をするのは絶対に嫌なので三木ヱ門は強引に話題を戻した。
「善法寺先輩の性格を利用して三重策を張った――、というところまででしたね」
「ふむ、それで? 続きはどんな話になるんだ?」
もっともらしい顔で仙蔵が先を促す。
文次郎は片目を細めてそれを睨み、三木ヱ門へ「一旦止まれ」と言ってから、尖った声を投げた。
「何しに来たんだよ、お前は」
「喜八郎に連絡があって探していた。医務室前の廊下にいると聞いて来たのだ」
「なら、もう用は済んだんだろ。帰れ帰れ」
しっしっと手を振って追い払いこそしないものの、今にもそうしそうな雰囲気を漂わせて文次郎が急き立てる。不興げにくるりと瞳を回した仙蔵は、その目を三木ヱ門に据えると、不意ににっこりと微笑んだ。
途端に背骨を駆け抜けた戦慄に弾かれて三木ヱ門は思わず姿勢を正す。
「田村は今日の放課後、ずいぶんと忙しかったようだな」
「へ? ……あ、ええ、そう……ですね」
「散々な目にも遭ったようだ。教室の隅で囲まれて寄ってたかって恐喝されたり、水練池の傍で密か事をしたり――」
何故それを知っている、と今更言うまでもなく、忍雀が持ち帰った情報で仙蔵は先刻承知なのだろう。
それにしてもわざわざ語弊のある言い方をしてくれる。水練池という言葉が出た瞬間、文次郎の目元がぴりっと引きつったのを、三木ヱ門は見てしまった。
仙蔵もそれを見逃さなかった。嫌な顔をされるのもなんのその、にんまりと文次郎に笑いかける。
「おやおや。気になるのか。その辺りの話は聞いていないのか?」
「じゃなくて、聞かねえんだよ」
仏頂面の文次郎がぶすっと言い返した。


しかし兎も角も、恋ではない緊張感で及び腰になりながら雷蔵は喜八郎に引かれて帰って行った。
それでは失礼します、と言って衝立から出た直後に喜八郎は半歩戻り、「三木ヱ門、あとで宿題手伝ってよ」と念を押す。
「うん。分かってるって」
それを嫌がりもせず三木ヱ門が返事をしたので、文次郎がやや渋い表情になった。
「宿題くらい独力でやらんのか。自分の為にならないぞ」
「交換条件でそういう約束をしたんです」
「……です」
文次郎の渋面を気にも留めずにしゃらっと答える喜八郎に続いて、三木ヱ門は首をすくめるようにして頷いた。こっそり仙蔵に目をやると、臆面もなく手助けを頼んだ後輩の姿に、こちらもあまりいい顔はしていない。
生物委員会が隠している「面白そうなこと」、すなわち小猿について深入りしない方がいいという忠告を、情報源を秘匿して作法委員長に伝えるように喜八郎に言った。めんどくさいけど適当な理由をでっち上げるからその代わり滝夜叉丸に内緒で宿題を手伝って――というのが、喜八郎の出した条件だったのだ。
仙蔵がここでその一件を持ち出してこないと言うことは、約束は守られたらしい。それ以前にまだ伝えていないという可能性もあるが。
文次郎は文次郎で三木ヱ門が飲み込んだ「秘密」のことを思い出したのか、それ以上は突っ込んでこなかった。雷蔵と喜八郎が立ち去ってひとり残された兵助を見て、「袖を掴んでおけ」と左吉を隣に座らせる。
「こっちは狸じゃなくて本気で寝てるよ」
呼吸を窺った伊作が呆れたように呟く。この状況で、図太いなぁ。
「で、お前はなんで当然ってツラして居座ってんだ仙蔵。と言うか、天井裏の檻って何に使うんだよ」
「なに、訳あってすずめを飼っていただけだ。じきに撤去する」
「すずめぇ?」
なんでそんなもんを、と訝しむ文次郎からさり気なく顔を逸らして三木ヱ門は冷や汗を拭った。

仙蔵と喜八郎のどちらに先に答えたらいいのかと伊作が戸惑う間に、喜八郎が畳み掛ける。
「不破先輩を部屋に帰らせるまで私の仕事が終わらないんです」
「え?」
「そこまでするのが責任だそうですので」
「ええ?」
喜八郎が言うことの意味がさっぱり掴めないらしい雷蔵が、右に左に首を傾げる。
日頃は穴を掘ったら掘りっぱなしで留三郎に飽きることなく叱られている喜八郎にしては、珍しく殊勝な態度だ。よほど伊作に骨身に染みる説教をされたのかと三木ヱ門は考え、滅多なことでは打っても響かない喜八郎に一体どんな叱責を並べたんだろうと、温顔の保健委員長の底知れなさにふとゾクッとした。
その保健委員長は、やや真面目な表情になってしげしげと雷蔵を検分している。
「気分は悪くない?」
「はい。少し、ぼんやりしてますけど」
「ふんふん。まともに会話もできてるし、視・知・聴覚と意識レベルは問題ないね」
「……会話ができないくらい重症だったんですか、私」
「できたけど、噛み合わなかっただけ。で、話の内容の整合性はとれていたのが興味深いんだよなあ。……綾部、あの粘着剤の原料は何なの」
「粘着剤」
そこだけオウム返しした雷蔵が真顔になった。
秘密でーすと軽く言い、立ち上がった喜八郎は固まる雷蔵の腕を取る。
「潮江先輩がそう仰るから久々知先輩は置いていきますけど、不破先輩は部屋に戻っていただきます」
「……待って。いや、部屋には帰るけど、何だか綾部が近くにいると神経がびりびりする」
「えー。それって恋ですか」
「絶対違う」
喜八郎以外の全員が唱和した。

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