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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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ブログ連載は本日更新分で一旦打ち止めで、年明け1月4日から再開します。
キリ良く420話だったので何となく縁起良さげ。
しかし朝9時15分からのアニメスペシャル再放送は見逃しました。夕方放送だと思い込んでた…。


2013年は弊サイト「ゆすら梅」をご閲覧頂き、本当にありがとうございました。
遅々として進まない連載や亀の歩みの更新が我ながら歯がゆくありますが、2014年も「ゆすら梅」にお付き合い頂ければ、これに勝る幸いはありません。

どうぞ皆様、よいお年をお迎えくださいませ。


大鷲ケイタ 拝

そのまま床に目を落として考え込んでいる。
やがてもう一度文次郎に向き合った時は、いくらか気後れするような顔をしていた。
「考えをまとめたいので、あとで……で、いいですか」
「分かった」
素早く文次郎が頷く。
兵助がぱちぱちと瞬きをした。文次郎の傍らに控える三木ヱ門は、その睫毛がはためくのをしばらく観察した。
「……別に監視はつけないが」
兵助の大きい目にじいっと見詰められながら、文次郎も瞬きした。
「お前を信用する」
「不正を企んでいるのにですか」
「二度はない、とも信じる」
三木ヱ門の目から見ても、地獄の会計委員長らしからぬずいぶんと「優しい」対応だ。
しかし、その物分かりの良さがかえって兵助には警戒心を呼び起こしたらしい。自分の耳に入った今の言葉は空耳ではなかろうかと、半ばきょとんとしていた兵助の表情がふと固くなった。
真実、全面的に信用しているのか、それとも「信じる」と言いながら何かの措置を講じているのか、判じかねているのだ。
兵助の睫毛の揺れが止まった。軽く頭を下げる。
「……では、後日、ご説明に上がります」
「ああ。待っている」
どちらにしてもここで謀を重ねれば強烈なしっぺ返しが来るのは確定している、と思い至ったようだ。
兵助はもう一度、今度はやや丁寧に頭を下げると、するすると衝立の内側から出て行った。
そのしっかりした足取りから察するに、ダークマター製ぬるぬるの後遺症は幸い無いようだった。
「善法寺先輩」
不意に左吉が鋭い声を上げた。
兵助と反対側の衝立の端にじりじり移動していた伊作がぴょんと背中を伸ばす。文次郎と三木ヱ門が一斉に目を向けると、へへへと困り笑いをした。
「ああ、見つかっちゃった」
「そりゃそうですよ」
思わず言葉が砕けた三木ヱ門が呆れ顔をする。ひとり減りふたり減り、だいぶ人数を減らした輪の中から抜け出ようとして気付かない訳がない。
「待たせたな。続きだ」
文次郎がにっと口の端を吊り上げてみせる。伊作は首をすくめ、「はい」と疲れたような返事をした。

年末風景の戯話を掲載&「夢十夜」再掲しました。

世の中がめでたさまっしぐらに収斂していくこの時期に、じめっと暗い企画物をアップする空気の読まなさ。どうしてもすることがない時の暇潰しや箸休めにどうぞ。


私事ですが、7年近く使っていた携帯電話が物理的に壊れ始めたので、これを契機にスマホに機種変更しました。深い青が気に入ったアンドロイドをぽちぽちいじってます。
しかしガジェットはガラパゴスを脱したものの、使い手が所詮イグアナなので如何ともし難い。

元日は国立行くぞ! と思ってチケットサイトを開いたら天皇杯決勝は全席完売してた…。
文次郎がひどく苦い表情に変わる。
仙蔵がこっそり耳打ちして、それを聞いた相手がこんな反応をしそうなことに、山ほど心当たりがあるらしい。
しかし三木ヱ門は、
「……からかわれてるんじゃないかなぁ」
と、口には出せずにもぞもぞと呟いた。
心当たりがあると仙蔵は知っているから、意味あり気に内緒話をして見せて、こっそりとそう言い含められた兵助も「大変なことを聞いた」演技をしている。
根拠はないけれど、そんなふうに感じる。火薬と同じく会計には遺恨がある――ない委員会の方が珍しい、と言うより無い――作法委員長による、ちょっとした意趣返しの手伝いだ。
仲良くやれ、という駄目押しから察するに、文次郎が三木ヱ門に対して妙に甘いとかなんとか話した(ように思わせた)のだろう。
「とにかく」
気を取り直して、文次郎は兵助に厳しい目を向ける。
「理由があるなら話せ。今すぐは無理だというなら後日でいい。ただし、他の五年と口裏合わせをしやがったら、その時は覚悟しておけ」
真面目な表情に戻った兵助は、その言葉を聞いてぺこりと頭を下げた。
「……ご厚情、感謝します」


……そう言えば。
地下道へ八左ヱ門と共に落下してきた作法委員たちは、何故だか皆、ひそひそ声で喋っていた。その話し方には何か理由があるのかと三木ヱ門が尋ねると、仙蔵は「気になるなら気にしていろ」と笑ってはぐらかした。
それより前、長屋の廊下で同級生たちと立ち話をしていた時、喜八郎が猫の鳴き真似を――それも大きい声で――すると、庭先の陽だまりで寛いでいたすずめはわっと飛び立った。
……あれも「驚いた」からだ。
小さくて用心深いすずめは、びっくりしたらただちに逃げる。生存競争に勝ち残るためのその本能ばかりは、いくら鍛えたって変えられないだろう。
あのひそひそ喋りは、何か事が起きた現場の近くにいる忍雀を驚かせない為――だったとか。
そんな馬鹿な。……いや、鷹狩りの鷹の代わりにすずめを調教して妙な方向で成功させた立花先輩なら、それも有りなのか?
こういう言い方をするということは、今この時にも、表には忍雀が控えているのか。
ぐるぐると考えて目をうろつかせる三木ヱ門に仙蔵は「仲良くやれよ」と謎の言葉を投げかけ、ひらりと踵を返して衝立から出て行った。
とん、と軽い音を立てて、医務室の引き戸が開いて閉まる。
「何をしに来たんだあいつは、本当に」
苦々しげに言った文次郎は、わざとらしく天井の隅の方を向いている兵助に、
「何を言われたのか知らんが、与太話だぞ」
と釘を刺した。
兵助の視線がゆっくり上から降りてくる。
「あれが与太なんですか」
あれ、の部分に妙に力を込める。

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