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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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ヒンジが壊れて閉じても閉じきらず微妙に隙間が空くようになった旧ケータイをそう表現したら、「茹でると逆に殻が開かないやつな!」と社長に妙に受けました。

年が明けて10日経ったのでクリスマス話と言うか年末ネタ詰め話を下げました。
書いていませんでしたが、大みそか話も期間掲載ということでそのうち下がります。
諸泉が掃除サボりがばれてボーナス没収になったかどうかは神のみぞ知る です。ドクタケ城は給料がいいと時々言われてますが、南蛮貿易をするだけの資金力があるらしいタソガレドキもそこそこ良さそう。

うちの会社も我慢強いすずめの忍び泣き程度に年末賞与は出たんですが、社長がコツコツ業績不振の前振りをしてたので出ないのも覚悟していたから出ただけでもマシなんだけどどうせ泣くなら号泣していいのよすずめ。
1、2年前に社員全員が会社を受取人にした生命保険に加入したので、そろそろ謎の事故死者が出るんじゃねえかと囁かれてます。独り者かつ一人暮らしで下っ端の私が最有力フラグ保持者です。メガネで蝶ネクタイの小学生が身辺に現れたら数え役満だ。

続きからメルフォの返信ですー。


指でまぶたを押さえて、こちらも俯いている。
「し、潮江先輩?」
まるで伊作の告白に胸を打たれて貰い泣きしたように見えるが、驚きつつおっかなびっくりでよく見てみると、勿論違った。
「……眠い」
今の今までぴんしゃんしていた文次郎が、ふわふわした口調で何とも唐突な一言を吐く。
決算作業で何日徹夜になろうが「疲れた」とか「眠い」とかの泣き言は口にしない会計委員長の呟きに三木ヱ門と左吉は顔を見合わせた。左吉は余程びっくりしたのか、目は点になっているのに口はぽかんと大きく開いてしまっている。
三木ヱ門ははたと自分の口を押さえたが、幸い開きっぱなしではなかった。
「大丈夫ですか?」
それ以外に尋ねようがなく、口元に手を当てたまま何となく声をひそめるようにして三木ヱ門が気遣うと、文次郎は指先を額に押し当ててようやく少し顔を持ち上げた。見るからに無理をして見開いている目は黒目の周りに細い血管がびしびしと網目を描いている。
「分からん。急に、やくと……、薬湯のによ、匂いが、染みる」
呂律まで怪しくなってきた。
「目に、ですか」
苦いような甘いような、まさしく「薬臭い」という表現がぴったりな匂いはそこら中に残っているが、それは緩やかなもので決して刺激的ではない。左吉が自分の目を指して尋ねると、文次郎は大儀そうに首を振った。
「頭。……が、ぼおっとしてきた」
「文次郎は飲んでいないけど、薬湯の湯気は吸い込んでるからだよ」
そろりと頭を起こした伊作が小声で言った。

まだ医務室の中に濃く残っている薬湯の匂いがふっと鼻先を漂う。
外廊下にごろごろしていた涙と鼻水で水没しそうな人の群れは、駆け回る生き物たちが悪気なく振りまく塵や埃にちくちくと攻撃された、気の毒にも「敏感過ぎた人」だったということで……流行り病のはしりのような状況が起きていたというのに、道理で保健委員長は慌てもせずすぐに対応策が出て来たわけだ。
症状の原因をとっくにご存知だったんだから。
「他の保健委員はこのことを知らないんですよね?」
念のためにと左吉が確認すると、伊作は垂れたままの首をわずかに上下させた。その首の角度は骨が折れているのではと一瞬ぎょっとするほど急で、「がっくり来ている人」と題をつけて掛軸にできそうなくらい、伊作は落ち込んでいる。
「僕が不運につきまとわれているのは周知の事実で、自分の身の上に起こる分には、もう慣れたからいいんだけど、さ。僕のせいで他の人まで不運な目に遭わせたのは――しかもそれが健康被害だったのは、保健委員長として一番してはいけないことをしてしまった、と承知している」
床板の節目を熱心に数えているかのようにじっと真下に視線を落としたまま、伊作がもごもごと言う。
八左ヱ門を屋根まで追い掛け回して石礫を浴びせるという普段の伊作からは想像もつかない行動もそうだが、医務室で訊問を始めてからいやにはしゃいでみせたり黙念として俯いたり、気性が乱高下して落ち着きがなかったのは――それでは、止むことなく罪悪感に心を揺さぶられていたから、なのか。
ちょっと「甘い」見方かなと思いつつ、今にも平伏しそうな伊作から文次郎に目を移して、三木ヱ門は思わずきょとんとした。

話が逸れている、と言いながら文次郎は手首を捕まえている伊作を振りほどき、もう一度手を上げて注目を集めている頬を隠した。
「俺の面のことはどうでもいい。今はお前が振り撒いた偽風邪の話だ」
「逸れているようで関係あるんだ。その洗顔料、誰でも使えるように刺激の少ない材料を選んで調合してるんだけど、それでも稀にどうしても肌に合わない人もいるんだよ」
その場合は、本人の心持ちやだんだんに慣れさせれば良いというものではなく、体質だから仕方がないと言う他ない。
ほとんどの人には問題がないけれど受け付けられない人はどうやっても駄目――というのは、洗顔料に限らない。強い日差しに当たると目が痒くなるとか、いちじくを食べると口の中までかぶれるとか、
「動物の細かい毛や羽毛でくしゃみが止まらなくなるとか、埃を吸い込むとひどく咳が出るとか……ね。それで今、長屋と校舎内の一部で、体力増強剤の影響が残ってる生き物たちが元気にばたばたしてるから、それに身体が反応してすびすばーになる人も出て来ちゃうかな、と、……予想はしてました」
「紛うかた無きバイオハザードじゃないですか!」
二の句が継げなくなった代わりに咳をした文次郎に代わって三木ヱ門が言うと、伊作は頭ががったり外れそうな勢いでうなだれた。

「赤剥けの肌荒れのすっごくひっどいのが起きる」
文次郎の頬から目を離さないまま伊作があっさり言う。
「因幡の白兎状態ですか」
左吉がぼそっと言うと、その惨状を想像したらしい文次郎の喉が大きく上下に動いた。うん、と返事をした伊作は指先でかりかりと自分の頬を掻く。
「そうなっても、海水を浴びて山の上で日光浴しろとは言わないよ」
「言われてもやらねぇよ!」
「だよね。でも、文次郎のは順調な感じだから大丈夫だと思う」
「皮が一枚剥がれるって物騒な話に聞こえますけど……一体、何の為にそんなものを?」
自分の頬を手のひらで撫でて三木ヱ門が尋ねる。伊作は三木ヱ門のすべすべした額や鼻の辺りを流し見て、「田村には必要なさそうだけど」と口を開いた。
「きれいな肌には年齢や性別を超えた普遍的な価値があるんだよ」
「はあ」
「そういう訳で保健委員会では今、美肌効果のある洗顔料を製作中なんだ。副作用なしで効果が見込めるものができたら良い値で売れるだろうと思って」
大袈裟な口上から一気に俗な話になった。
しかしまあ、無事に完成すればくのいち教室の女の子たちに大受けする逸品にはなりそうだ。そこで評判を取れたなら、市中へ持って行ってもそこそこの需要が期待できる。特製洗顔料を売って得た収入は――
「申請が通らなくて不足している予算の補填に回す、か」
そう言って、申請却下を言い渡す当人の文次郎が口を曲げる。八左ヱ門から回して貰った薬種商のルートだけでは予算不足は容易には埋まらないらしい。
「今の時点ではほぼ出来上がってるんだ。それにさあ」
不意に伊作が両手で文次郎の顔を掴み、三木ヱ門と左吉の方へぐいと捻じ曲げた。
「慢性的に睡眠不足で内蔵に過剰な負担がかかる食事の摂り方をしてて水に浸かって眠るなんて低体温症をこじらせて死にかねない行為を日常的にしてる文次郎が、僕らの開発した洗顔料ひとつでつるすべ肌になったら、これ以上ない宣伝効果があると思わない?」
「ああ、なるほどそういう訳で」
「納得すんな!」

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