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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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斜め前の方角から木箱を抱えたタカ丸と三郎次が連れ立って歩いて来る。行く手に目を凝らしていたタカ丸は、そこにいるのが三木ヱ門と文次郎だと気付いて、気後れしたようなほっとしたようなどっちつかずの表情を浮かべた。
「……先輩こんにちは」
首を縮めるようにして挨拶した三郎次が一本調子に言い、やや目が泳いでいる文次郎を見て不審そうな顔をする。それよりは愛想良くこんにちはと言ったタカ丸は、三木ヱ門の唐輪髷にきらりと目を光らせた。
「どうしたの、その髪。自分でやったの?」
「いえ、あのー、先輩が冗談で」
「え、潮江先輩が!?」
軽く仰け反るほどタカ丸が驚き、文次郎はまたぷいとそっぽを向く。三郎次は興味がなさそうに木箱の中のものをかちゃかちゃいじっていたが、小さい皿や細長い匙や見慣れない道具が三木ヱ門の注意を引いた。
「何が入っているんだ? 調合の道具か?」
「ええまあ。新しい火薬用の新品です。はい」
言いながら三郎次は箱の隅に突っ込んであった小冊子を引き抜き、それを三木ヱ門に差し出した。
「……何、これ」
「トリセツですよ。先輩、試射をするんでしょう。読んでおいて下さい」
なるほど、表紙には「なんとか商館謹製御道具取扱説明書」と書かれている。お試しで買い入れた火薬を各種火器で試し撃ちしてほしいと兵助に頼まれたのを忘れてはいなかったが、頭の端に追いやったきりになっていた三木ヱ門は、受け取った冊子をその場でぱらぱらめくってみてたちまち心を取られた。
が、文次郎にぽんと頭を小突かれて我に返る。
「後にしろ、後に。今はやることがあるだろう」
「でした……」
「あー。あのね、喜八郎が三木ヱ門を探してたよ」
宿題宿題宿題とイラつきながら、とタカ丸が苦笑しつつ教えてくれる。そして、試射とは何の話かと三木ヱ門に尋ねている文次郎に向かって、いくらか真面目な顔をした。
「あのう、先輩。こういうのはちょっと感心できないですよ」

一日遅れてバレンタイン話を掲載しました。
会社に出入りするヤマトや佐川のドライバーさんにいつもお世話様ですこれどうぞーとやるようなもので南蛮坊主に他意はありません よ。
神戸か掛川の花鳥園では、飼育員のお兄さんに恋したオオハシが自分のエサの中から大好物のチーズを選り出してお兄さんにあげたりするそうです。かわいい。


昨晩は小話を清書しつつ、フィギュア男子FSを見て3時間寝たら出勤だーと計画していたら降雪の影響?で中継局だけワンセグの電波が入らない
→NHKでスケルトンとジャンプを見ながらネットの速報と実況を見ていた午前二時停電
→ルーターが落ちネット接続できなくなって不貞寝
→いやこんな時こそスマホだろと思い付くのと同時に電源復旧 町田選手は既に滑走終了
→HTML変換作業に手間取って高橋選手の演技実況を見逃す
→午前三時半過ぎにどうにかアップ
→ブラウザのタブを切り替えて目に入った実況サイトの最新コメントが「羽生ボロボロ」で !?
→時間的に限界だったので寝て起きたら金メダルを取っていた

羽生選手のコメントを読むと反省しきりな感じですね。
映像をひとつも見ていないので演技の感想は言えませんが、リンクに魔物がいたとか…。


大雪・雷・強風・洪水・なだれ・着雪の各種警報注意報と竜巻注意情報が朝から発令っぱなしで、会社から自宅待機指示が出て実質休みになりました。
余儀なく外出する際は皆様どうぞお気をつけて。
甲府がすっごいことになってるらしいですね…。


続き以下に雪写真あります。
何だかよく分からない。理由付きの嫌いなら大した「嫌い」じゃない、ということだろうか。
「でも――」
「あんまり"でも"って連呼するな。言葉が安っぽく聞こえるぞ」
「はあ。でも、先輩だって助けますよ」
口では物騒なことをうそぶいていても、仲の悪い身近な誰かが危機に陥った時に、文次郎がそれを一顧だにせず見殺しにするところは想像できない。その代わり得物を引っ掴んで飛び出していくところは容易に想像できたから、確信を持って断定すると、文次郎は目の前で手を叩かれたような顔をした。
「……俺がピンチだったらじゃなくて、田村の立場を俺に置き換えたら、の話だよな。いや、なんでお前が言い切るんだよ」
「なんでと言われましても」
改めて理由を問い質されても困る。だってそうでしょうに、としか言いようがないから、そう言った。
「私が知っている潮江文次郎先輩はきっとそう行動する方です」
「……」
「でしょう?」
ぽかんと開いた文次郎の口の中で、うわぁ、と小さい呟きが聞こえたような気がした。だけでなく、三木ヱ門から顔を逸らして、その顔を片手で覆って俯いてしまった。
「あれ。どうなさいました」
「ちょっと……、そっとしといてくれ、頼むから」
「え、大丈夫ですか。もしかしてまだ湯気の影響が――」
「仕返しか?」
「はい? 何のです?」
三木ヱ門が首を傾げると、今日の放課後だけでどれだけ醜態を晒しているんだ俺はと呻いて、文次郎はますます下を向く。医務室で仙蔵にからかわれた時と同じように耳のふちがうっすらと――いや、木のてっぺんに最後まで残った柿の実みたいに、赤い。
何かが猛烈に恥ずかしいらしい。しかし何が、と三木ヱ門が不思議がっていると、少し離れた所から声がした。
「そこにいる四年生、だれ?」


相手にすると鬱陶しいし、何かと張り合ってくるのが憎たらしいし、できるものなら姿を見かけ次第こっちに来るなと追っ払ってしまいたいくらい嫌いだ。体育委員長に率いられたウルトラマラソンが3周目に入り、気取る余裕もなくしてへろへろになっているのを見かけたら、ざまあみろと心の中でちょっぴり笑う。どうせ滝夜叉丸だって、10kgそろばんを担いで半分泣きながら冷たい池に沈んでいる会計委員会を見たら、同じことをするに違いないのだし。
だけど、自分に面倒くさく関わってこなければ、別にそこに居たっていい。
この世からいなくなってしまえとまでは思わないし、命が危ういくらい酷い目に遭っている現場に出くわしたら、放っておくことはたぶん出来ない。
――とぐちゃぐちゃ考える前に、三木ヱ門は答えていた。
手早く紐を結んだ文次郎が、真顔の三木ヱ門を見てにっと笑う。
「だろうな。お前の"嫌い"は、骨が多いから鮎は嫌いだと言うのと似たようなもんだ」
「私は鮎は好きです」
「知ってる。物の例えだ」
「……それでは食満先輩は、先輩にとっての鮎なんですか」
骨が多くて食べ辛いから積極的には手が出ない。でも、食べれば旨いことは知っているから、鮎なんていなくてもいいのにとは思わない?
「俺はあの野郎くたばっちまえと思ってるよ、常に」
束ねた髪をぽんと弾いて、文次郎は本気とも冗談ともつかない調子で言った。


何となく握り合ったままになっていた手はしばらく歩くうちにどちらからともなく離れる。
歩きながら何度か空いた手を開閉した文次郎は、今度はうなじの辺りで髪をひとまとめに掴んで、袖に入れていた紐でその根本をくるくると括った。
「傍目には分かりにくいですね」
それを横目に見ながら三木ヱ門が言うと、結び目の位置を決めかねている文次郎は無造作に「何が」と返した。
「先輩と食満先輩の仲が」
「悪い」
迷いもせずすぱっと答える。
「見てりゃ分かるだろ。馬も反りも合わねえ」
「それはそうなのでしょうけど」
その割りに、口喧嘩にしろ手足が出る掴み合いにしろふたりの呼吸は妙に合っている。血の気が多く好戦的な武闘派という方向性は同じだけに、考え方や行動は自ずと似通っているのか、能や狂言の掛け合いを見ているような安定感さえある。
「相性はいいように見えます」
「やめてくれ、怖気がする」
「でも、食満先輩が嫌いで喧嘩をしていらっしゃるのではないんでしょう?」
「それはなあ……お前は、平と仲がいいなって人から言われたらどう思う」
「えっ。イヤです」
先輩たちほど壮絶ではないものの、自信家で自慢たらしい同級生とは寄ると触ると諍いになるのが常だ。タカ丸はそれを「仲良し」と言って目を細めていたが、とんでもない。
「平が嫌いか?」
「嫌いです、あんな自惚れ屋!」
「じゃあ、あいつが命に関わる危険な状況に陥っていたとしても、全然気が咎めないで見過ごせるか」
「それは……助けます」

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