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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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ぱっと両手で耳を隠した文次郎を真顔で見つめながら、三木ヱ門は自分の耳をちょいと引っ張った。
「動物みたいにくるくる動かないけど、ヒトの耳も案外、感情が表れやすいそうです」
「……」
「今日は頭巾をつけていらっしゃらないから、見えちゃいました」
「まさか俺が冷静沈着だとか思ってたんじゃないだろうな」
「それはないです」
三木ヱ門の間髪入れぬ即答に文次郎がちょっと傾いた。
好戦的で激しやすく初対面のドクたまにさえ「無駄に熱いヒト」と評される文次郎が冷静沈着な訳がない。その自覚も皆無だろうが、きっぱり否定されると少しは気落ちするらしく、口調が幾分やさぐれた。
「なら、感情を制御できない未熟者だって思ったか。お前と二歳しか違わねぇんだから仕方ねえだろ」
「血流を意志でどうにかできたら人外ですよ。えーと……」
考え考え、三木ヱ門は言葉を継ぐ。
「腹が据わっているのと冷静なのは違いますよね。って、そうではなくて、……恥ずかしいとか照れるとか、そういう感情が先輩にもあるんだなー、と」
「……あん?」
「仰る通り年齢ならほんの二つの差ですけど、六年生は四年生から見ると恐れ多くて近寄り難いと言うか雲上人であって人ではないと言うか……だから、その、耳が真っ赤になるなんて人間っぽいところを見られてなんだか嬉しいなって……いえあの、失礼なことを言ってますね、私」
我に返った途端、どっと冷や汗が噴き出した。
これは殴られるぞと覚悟して首を縮めたが、文次郎は耳を押さえたまま動かない。
それでも、なおもしげしげと自分を見上げている三木ヱ門に、軽くため息をついて口元を曲げる。
笑ったのでも不満を示したのでもない。やや尖らせた唇には、拗ねたような色が浮かんでいた。
「俺にだって言いたくないことくらいある」
「でしょうけども」
「言わねえぞ」
取り付く島がないが、しかし。
首を左に右に傾けつつ、三木ヱ門はじっと先輩を観察する。
「私は今日、不破先輩に会うごとに涙目なところを見られていたんですが」
不思議そうな口振りで後輩が何を話し出すのかと文次郎がわずかに身構える。そして、「三木ヱ門に意地悪をして泣かせてはいけない」と未知のぬるぬるで機嫌の良くなった雷蔵に朗らかに注意されたのを思い出したのか、ふらっと目が泳いだ。
「医務室でそんなことを言ってた」
「はい。くしゃみ泣きだったのに、泣き虫みたいで決まり悪かったです」
「だろうな」
「私は今日、」
ついさっき言ったのと同じ台詞を口にしながら、三木ヱ門の視線が文次郎の顔から少し横に移動した。
「先輩の耳が赤くなるところをしばしば見かけます」
「……な、」
「ほら」

私は声優さんには全くもって疎いのですが、アニメ忍たまの文次郎役の方が「成田ケン」さんだということは知っていました。

YouTubeをぼけーと見ていた時、右テーブルに出る「あなたへのおすすめ」動画の中にその名前をみつけて、へー文次郎の中の人は歌手でもあるのかーとクリックしてみたら



別人でした。
超パワフルなこれを歌ってるのは成田「賢」で声優さんは成田「剣」だった。

サイボーグ009は平成アニメ(再放送)ではまって文庫を一気に買い揃えたなあ…
作者の石ノ森章太郎先生が亡くなって未完の大作になっていましたが、残されていたプロットノート等からお弟子さんや息子さんが漫画に起こして最近完結したそうで、読みたいような読みたくないような。

続きからメルフォの返信です。


感に堪えぬとばかりにしみじみ呟き、深く納得した様子で小刻みに首を振る。ぽかんとする三木ヱ門にタカ丸はきりりとした顔を向け、口元には一瞬慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、「大丈夫だからね」と力を込めて宣言した。
「そんなことになってたなんて、ごめん、知らなかったよ。絶対絶対誰にも言わないから!」
……いや、僕も知りませんけども。
一体何を言ってくれたのだと三木ヱ門は白目を剥きかけて文次郎を振り返るが、文次郎は裏々山のカラスの巣でも数えているような思い切り遠い目をして知らん顔だ。同じくやり取りを聞きそこねた三郎次も顔いっぱいに疑問を浮かべていたが、問答を許さない勢いのタカ丸に「ね!」と強く促されて、曖昧に首を動かした。
「別にいいですけど……何が何だか」
「はい、それじゃ僕らは立花先輩にお届け物に行こう。さあ行こう、早く行こう」
地面に置いていた木箱を持ち直し、先輩がお待ちかねだよと三郎次を急き立てて、タカ丸は忙しなくぺこんと頭を下げてばたばた駆け出して行く。すれ違いざま、三木ヱ門に向かって訳知り顔にぱちりと片目をつぶってみせさえした。
唖然としてふたりの後ろ姿を見送り、その影も見えなくなって更にもう少し経ってから、三木ヱ門はぎりぎりと首を回して横を向いた。
「どうやって言いくるめたんですか……と言うか、何を仰ったんですか」
明日の朝まで洗うなと伊作に厳命されている頬を指先で掻きつつ、文次郎は横目で上目遣いをする三木ヱ門から目を逸らしている。
「そんなことってどんなことですか」
「……」
「ねえ、先輩」
「……多少尊厳を削った」
「……」
「俺の、な」
「何の話を――」
「内緒だ」
やっと三木ヱ門と目を合わせた文次郎はそっけなく遮った。
しつこくしぶとくからかわれる程度なら大分ましだ。これを学園中に言い触らされたくなければ、と予算会議の切り札として「取っておく」ことを思い付かれたら、ただでさえ穏やかに済まない話し合いが拗れることは間違いない。
と言って、いま火薬委員たちに唐輪髷のことは仙蔵には黙っていろと釘を刺せば、これが会計委員長の弱味になるとわざわざ教えることになる。だから言い出しかねた文次郎は口をつぐんでしまったのだが、交渉カードを火薬委員会に保持されてもそれはそれでこれから行う監査も含めて色々なことがやり難い。追い込まれた者が厳しい詮議を逸らそうとして追及者の醜聞を声高に言い立てるなんて、よくある話だ。
「よくある」のはつまり、それが有効な手段だからだ。
食満先輩が"鼻薬"の実態を探ってくれと交換条件を出してきた時、「何かのために情報として取っておく」と言っていたのは、こういうことなのか。
……いや、のんびり思い出している場合じゃないか。この状況をどう切り抜けよう――
「斉藤。その箱を置いて三郎次の耳を塞げ」
「へ。三郎次の? 耳ですか?」
急に文次郎が奇妙な指示をした。きょとんとしながらタカ丸は素直に箱を地面に下ろし、事態が飲み込めない様子の三郎次の耳を両手で覆う。
「はい、塞ぎました」
「わっ」
タカ丸が報告するのと同時に文次郎は三木ヱ門の耳に両手を押し当てた。少し冷えた耳朶に染み入る手のひらの熱と、微かな風鳴りのような音で耳の中がいっぱいになって、そのまま何かを話し始めた文次郎とタカ丸の声はぐんと遠のく。
三郎次の頭をしっかり挟んで二言三言ほど口を動かしたタカ丸が、目を見開いた。それに対するように文次郎が喋る低い振動が、耳を塞ぐ手を通じて三木ヱ門の頭蓋骨にじんじん響く。
「――ま、そういう訳だ」
ぱっと手を離した文次郎がやや投げやりに聞こえる口調でそう言うと、タカ丸は神妙な顔つきでかくんと頷いた。
「はあー……忍術学園て、やっぱり大変な所ですね」
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