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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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今度は何日徹夜になるのかなあと悲壮に呟く。
妙な記述のある報告書を提出してきた8つの委員会のうち5つは内容を確認できたが、保健と火薬、それに学級委員長は予算の使途が不透明なままだ。が、生物と結んでいる保健は更に火薬とも繋がりがあるらしく、こうなって来ると、一度は理由を納得した生物の「鳥の餌代」も疑わしく見えてくる。
「まさか、"つづら"もどこかに噛んでくるのかな」
「つづらが噛み付くんですか!?」
「えっ?」
三木ヱ門の独り言に団蔵が素っ頓狂な声を出し、その声に驚いた三木ヱ門が我に返る。
しばし二人で顔を見合わせた。
「……今、暇か?」
じいっと団蔵に目を据えたまま三木ヱ門が尋ねると、団蔵はこっくり頷こうとして、慌てて「はい」と答えた。
その首根っこを掴んでぐいと引き寄せ、三木ヱ門は低い声で囁いた。
「実は、いくつかの委員会が連携して、予算を不正に使用している疑いがある」
「ふせーにしよー、ですか」
聞きなれない外国の言葉を口先だけで真似るように、団蔵がオウム返しをする。
「そうだ。そして、会計委員はその実態を明かす必要がある」
「……監査の前に?」
「もっともらしい理屈をつけて書類上は問題がないように繕ってあるんだ。監査に入ってしまうと、かえって建前を押し通して言い抜ける機会を与えることになりかねん」
ここはひとつ会計委員の手で諜報活動といこうじゃないか。
内緒話を聞きながら書き取りドリルを両手でこね回していた団蔵は、ひゃー、と小さく歓声を上げた。左門と何かあったのかと尋ねた時よりも一層、目がぴかぴかと輝く。
「それって何だかすっごく忍者みたいですね!」
「"みたい"じゃないだろ、"みたい"じゃ」
「左吉も呼んで来ていいですか?」
あいつ実践より理屈が先に来る頭でっかちだからこういう時は知恵袋で役に立ちますよう――と言いながら、三木ヱ門の許可を待たずに既に駆け出している。


「伊助はずっと教室にいたのか」
「はい。少なくともさっき僕が教室を出るまでの間は、一度も外に出て行ってません」
どうしてそんなことを聞くんですか、と反問もしない。
しかし物問いたげな顔はした。
それを目の端に見ながら、どうしてと尋ねたいのはこっちだと、三木ヱ門は忙しく考えた。
三郎の証言を頼りに伊作と一平を追って焔硝蔵まで来た時、兵助は開いた扉の所に立って、中にいる誰かと話をしていた。そして三木ヱ門と話をしている最中に伊助の名前を呼び、焔硝蔵の中の誰かに返事をさせた。
三木ヱ門に返事の声を聞かせることで、そこにはいない伊助をいるように思わせた――いや、「誰か」は伊助だと思わせた。
何の為に?
「誰か」の正体をごまかす為に。
何故ごまかした?
中にいるのは誰なのかと、三木ヱ門が焔硝蔵の中を覗くのを避けたかったから。
どうして?
個人で専用の火薬壷を買ったらどうだと冗談半分の無茶を持ちかけてきた時、兵助は「火器にかけては学園ナンバーワンと豪語するなら」と口にした。声を潜めてひそひそ話をしていた訳ではなく、今にして思えば敢えて聞かせたのかもしれないが、焔硝蔵の中にいた「誰か」は兵助の言葉を聞き、外にいるのは三木ヱ門だと察しただろう。
その上で、"伊助"と呼ばれて返事をした。
……中にいる「誰か」は、焔硝蔵にいるところを三木ヱ門に見つかってはまずい人物だったから?
それは焔硝蔵に向かったはずなのに立ち寄った形跡がなくて見失ってしまった伊作と一平なのか?
裏で手を組んでいるらしい生物委員会と保健委員長が、用具委員会には憚る所があるとして、三木ヱ門にも――と言うより会計委員会に対しても何か後ろ暗い所があり、火薬委員会はその隠蔽に協力するだけの理由がある?
その理由は、三郎次とタカ丸が劇的に反応した実在の怪しい鳥の子玉と関係はあるのか?
「今月の決算は手間が掛かりそうだ」
「あ。収支報告書、もう出揃ったんですか」
三木ヱ門がこぼした言葉に、団蔵はふと表情を引き締めた。


ブログ連載の#101-110、#111-120をサイトに掲載、節分ネタを下げました。
三木ヱ門に学園の中を歩き回らせている割に建物の位置関係が全然分からないので、コミックを資料にマッピングしてみようとしたものの、配置図が分かるような絵や「敷地内のどこに何がある」って台詞がほとんど無くて呆気なく挫折しました。「一年生の教室は三階」「男子寮は"長屋"で女子寮は"屋敷"」「くの一教室は高台にある」等々の断片的な情報はあるんですけどね…。
今更ですが、ブログ連載にはドラマ・映画・マンガの台詞やシチュエーション、曲の歌詞をちょこちょこ紛れ込ませてます。ストーリーに直接関係しない遊び要素なので気付いたら半笑いして頂けると幸い。


2月14日はゴロ合わせで「煮干しの日」であり「ふんどしの日」でもあるそうなのでトップ絵があんなのに。
しかしよく考えたらあひるは最も隠すべき所が隠れてなかった。

チョコレートネタは去年やっちゃったので、行事としてのバレンタインデーを室町時代に落とし込んでみようとした けど 無理でした。バレンタイン行事関連でざっと探した中で一番古い資料は昭和初期だったので、人対人の「愛」の概念がない時代の日本にバレンタインデーをプロデュースした敏腕宣教師はいなかったと見える。
「I love you」の翻訳は夏目漱石の「月が綺麗ですね」より二葉亭四迷の「わたし死んでも好いわ」の方がおどろおどろしくて好きです。


大らかと言うべきか、迂闊と言うべきか。
水飴は甘いから馬も好きですと呑気に言う団蔵に、三木ヱ門はちょいと唇を尖らせた。
「大抵の動物は甘いものが好きだな。ところで、善法寺先輩を見なかったか」
一応尋ねてみるが、予想通り団蔵は首を振った。
「放課後はずっと教室で作文を書いていたので」
「ふうん……ん? そう言えば、お前の他はみんな時間内に仕上がったのか?」
虎若、三治郎、金吾、しんべヱ、喜三太、乱太郎、声だけだが伊助、それにきり丸、放課後にあちこちで見かけた一年は組の面々は、果たして作文は得意だろうか。
団蔵は再度、首を振った。
「庄左ヱ門ときり丸以外は書き終わりませんでした」
「庄左ヱ門は分かるけど、きり丸も手が早いのか」
「反古紙にしたら勿体ないからって、書き直しをしないで一気に仕上げちゃうんです」
だからみんな授業の後もみんな教室に居残りでうんうん唸ってました。
それでも委員会の当番や用事がある者はできる限り急いで書き上げ次々に教室を出て行ったが、何の予定も無かった団蔵は目一杯時間をかけて呻吟していたので、結びの句にこぎつけたのは一番最後だった。
「ひとりで延々と作文を書いてたら、煮詰まるだろう」
山のような書類を清書していた吉野は、つい生徒に八つ当たりするほどカリカリしていた。それを思い出して三木ヱ門が言うと、団蔵はニッと笑った。
「庄左ヱ門と伊助も教室で雑巾を縫ってたから、適当に喋ったり行き詰まったらアドバイスを貰ったりして、のんびりやってました」
「ちょっと待て」
五年生の三郎が食草園で昼寝をしていたくらいだから、学級委員長の庄左ヱ門は今日は委員会活動がないのだろう。だからクラスの仕事として、は組が使う雑巾を縫っていた。それはいい。それは納得できる。
だが、火薬委員の伊助は、焔硝蔵で兵助と在庫を調べていたのではないのか?
兵助が焔硝蔵の中へ向かって呼び掛けて返事をした遠い声は、それでは誰のもので――兵助はなぜ、そこにいない伊助の名前をわざわざ出した? いやそれ以前に、在庫確認の最中だと言ったのも、つくりごとか?

どうして嘘をついた?

先輩がこういう表情をした時に混ぜ返したらものすごく不機嫌になる、と身に染みているらしい。
三木ヱ門の鋭い制止に、じゃあ向こうで待ってます、というボケを団蔵はしなかった。


「水飴が勿体ないな」
顎に手を当てて三木ヱ門がぼそりと呟くと、無精を叱られるかと身構えていた団蔵は意外そうに軽く目を瞠った。
「きり丸みたいなことをおっしゃいますね」
「独り占めする坊主もいた。ケチと水飴は相性がいいんだろう」
他のことを考えている三木ヱ門は素っ気ない返事をする。それって何の話でしたっけ、とうまい具合に団蔵の気が逸れた。
また"ひと月ほど前"だ。
用具委員会との勝負に臨む生物委員会が提供を受けた(と思われる)保健委員長謹製の体力増強剤は、薬種の蜜漬けだ。
とろりとした甘い液体であるところは水飴に似ている。
使い残した蜜漬けを虎若が預かったものの、とっ散らかった部屋が災いして景気良く床に吸わせてしまい、またそれを拭った布も床の上に放りっぱなしで、その匂いを嗅ぎつけた長屋の生き物たちがやれ嬉しやと舐めた為に、日に日に寒くなるこの時期にも関わらず元気百倍――という筋書きに、齟齬は無さそうに思える。
ねずみや虫を湧かせるとすればその出処は一年は組、という推測にもしっかり当てはまる。
薬が余ったからと捨ててしまうのは勿体ないし、保健委員の乱太郎が孫兵のきみこに蜂蜜を舐めさせたように、怪我や病気で元気のない生き物にほんのちょっと与える分には使い道がありそうだ。しかし委員長代理の八左ヱ門が隠し持っていては、用具委員会に不審を抱かれて内偵でもされた場合にきつい追及を受けるのは間違いない。
その点、相手が一年生なら用具委員長もそう厳しいことはできまい。それに元からごちゃごちゃの部屋なら小さな瓶のひとつくらい難なく紛れ込ませておける――と踏んだのが裏目に出たか。
「虎若はその水飴をどこから持って来たんだ?」
念の為に尋ねてみると、団蔵は妙な質問にきょとんとしながらも頭を掻き掻き答えた。
「誰かからの貰い物みたいです。せっかく貰ったのにーって、すごく嘆いてましたから」
本物の水飴にしても安いものではないが、それを贈ってくれたのは誰なのか強いて聞こうとは思わなかったらしい。



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