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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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この金融業者は借金のかたに金目の物を取り上げるような商売はせず、債務者が金目の物を金に換えてからあらためてそれを頂く現金決済を旨としていたので、有無を言わせぬ現物返済をされて大いに困った。
「これが鷹や駿馬なら欲しがる人がいるから、売り払うこともできます。でも、全く人に懐かない気性の荒い猿では転売もできない。寒いのが駄目だから猿の住み家はいつも暖かくしていなくちゃならないし、餌も輸入品の特別製です。手元に留めておくだけでどんどん費用がかさむ」
しかし、土倉もまた行き場のない猿を放り出すほど冷たい人物ではなかった。
「土倉は趣味で南蛮の鸚鵡を飼っていて、これもやっぱり初めは暴れて全然懐かなくて、仲良くなるまで大変だったそうなんです」
その経験から、小猿が荒れ狂うのは、まったく環境の違う場所へ突然連れて来られて不安がっているからではないか、と推測した。
そこで、鸚鵡を通じて親交のある南蛮人の貿易商に頼んで、往来する船に便乗させて元いた国へ送り返してやることにしたのだ。
「いい話だなー。……では済まないんだろうな」
「飼育大名家にこの話をちらつかせて商売上の便宜を随分ぶん取ったみたいです」
それはともかく。
貿易商は滞在中ずっと商談や買い付けに駆け回って忙しく、猿の世話などとてもできない。そこで、出航までのあいだ猿を預かってくれる人はいないかと知り合いの貿易商に相談した。
大川平次渦正と親交のあるその貿易商が紹介したのが、忍術学園生物委員会だったのだ。
やっと繋がった話に、三木ヱ門は腕を組んで「ふーん」と唸った。
「預かりものを逃がしてしまって大騒ぎなのは分かった。しかし、隠すような話なのか?」
人の都合で振り回された気の毒な猿が故郷へ帰るというのは、どちらかと言えば美談の部類に入る気がする。
「大名同士の贈り物はお互いの面子がかかってるから、事の経緯はどうあれ、紆余曲折経て結局返品しましたなんて大っぴらにできないですよ」
だから猿が人の手を巡るにも、いちいちそれらしい理由が必要だった。学園外に出た生徒の口から無邪気な世間話が漏れ、せっかく繕った建前を無残に突き崩してしまっては、色々な所で顔が立たなくなる人たちが出る。
「しかし、見も知らぬ大名の世間体と引換えに、たらい回しに巻き込まれた忍術学園の人間が咎を受けて首を刎ねられてはたまらない」
三木ヱ門がそう言うと、孫兵は少し伸び上がって衝立の向こうを窺った。
乱太郎と留三郎はまだドタバタと追いかけっこをしているし、左近は反古紙にずらずら計算式を書き連ねて頭を抱え、どちらも2人に注意を向ける様子はない。それを確かめてなお孫兵は声を低くして、ぼそりと言った。
「飼育大名と傾奇大名はどちらも国持ちなんです」
ひどく脆いくせに、体面てやつが馬鹿馬鹿しいくらい大きくて広いんです。
二の句が告げなくなって、三木ヱ門はひょいと自分の首を撫でた。




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