※12月6日 一部修正しました。やっぱりあった前出忘れミス。
※今更ですが、学園の予算システムは原作中であまり明確でないので、大方創作です。
怪しい怪しいと思って見るから怪しく見えるだけで、質してみれば案外そんな枯尾花かもしれません。
「薬餌代はあとで生物委員会から回収するという話ができているならば、保健委員会の損にはなりませんし」
「生物と保健で予算の融通――ねえ。有りなのか、それは」
「無しです」
それがまかり通っては委員会毎に予算を配分する意味がありません。
四角四面に言い切った三木ヱ門がちらりと含みのある表情をすると、留三郎は苦いものを噛んだ顔になった。
備品購入費や破損品修繕費などできる限り使いみちを明確にして会計委員会へ予算を申請し、それが認められると、必要額は月の初めに一括で配分される。月末になれば、その予算が申請通りに使われたかどうか、収支報告書と会計委員による監査で確認して決算する。
ということになっている、が。
報告書の辻褄がきちんと合っていて、かつ監査でボロを出さなければ、実のところ各委員会で予算がどう使われても何の問題もない。用具委員会の予算を吸い上げたどこかの委員会だって、その点はきれいに口を拭って、収支報告書には配分された予算内での使途内訳のみを記入している。
建前の予算案でいかに審査をかいくぐりより多くの予算を獲得するか、そうやって得た予算をいかに上手く運用するか、会計委員会はそれらの工作をいかに見抜くか、全ては「忍術修行の一環」なのだ。
ちなみに用具委員長がやけっぱちな筆跡で書き込んだ支出の名目は「消耗品代」、内訳は「土俵設営及び行事招聘及び御車代その他」、必要物資の購入先は福富屋だった。
忍術学園内で相撲興行が行われた事実はないので突っ込みどころしか無く、そう書いた事情は半ば公然の秘密だが、監査に入れば委員長同士の一悶着は必至だ。
また決算に時間が掛かる――と思ってやや暗い気分になった三木ヱ門は、綿入れをかき寄せ、火鉢に両手をかざして短いため息を吐いた。
「……とにかく、予算の懸案については我々会計で解決します。今は生物委員に状況を教えなくては――そう言えば、一平は医務室に来たはずだ」
声の大きい内緒話の中で虎若たちがそんなことを言っていた。乱太郎に尋ねれば、今の一平の居場所が分かるだろうか?
「生物、なぁ」
噛んだ苦虫を奥歯ですり潰すような口調で、ぼそりと留三郎が言った。