「どこで売ってるんだ、こんな柄」
三木ヱ門から手拭いごと飾りを受け取り、爪で弾くようにして引っ繰り返したりしながらしげしげと検分する。
「綺麗だが、使い道が分からんな」
「小さい女の子の髪に結ぶ飾りか、あるいは猫の首輪かとも思ったのですが」
「命婦のおとどもこんな贅沢な首輪は持っちゃいるまいよ。作兵衛の私物でもないな。学生の小遣いで買える代物じゃなさそうだし、密かな懸想の相手に贈るったって張り込み過ぎてる」
飄々と言う留三郎は、なぜか楽しそうだった。この事態を面白がっているようにも見える。
鹿子に腕を突っ込んでいた作兵衛が逃げ出した後にはこの飾りがあり、生物委員会が逃がした外つ国の小猿は謎の先生によって学園の外へ持ち出されてしまい、白面赤目の文次郎や今日も元気に地下道掘りの体育委員会はさておいて、収支報告書の不審点について火薬委員会は強い警戒を見せ図書委員会は泰然としていた――等々、凍てつく殺気に当てられて会計委員会の活動に関わることまで喋ってしまったのが、今となっては悔やまれる。
勝負に負けて委員会の予算を取られたと留三郎はあっさり言った。
噂の一部を委員長自ら認めた訳だが、それを他言するのは沽券に関わるとばかりに勝負の内容とその相手については口を滑らせない。三木ヱ門のことは恫喝しておきながら、だ。
……ちょっとしゃくに障るぞ。
それはそれとして、火鉢と綿入れが心地よく暖かい。知らず知らずのうちに冷えてこわばっていた耳の縁や鼻の頭がほどけて緩んでくるようだ。その隙間から温められた空気が入って来てくすぐったい――
「へっくし」