終わりが見えないののののの。
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「お前、意外と付き合いがいいんだな」
一気呵成に喋り通して肩で息をする三木ヱ門をいくらか呆気に取られた表情でしばらく眺め、それから「一緒に来い」と言った留三郎が向かった先は、医務室だった。
「いらっしゃいませこんにちはー。あれっ?」
峠の茶屋の店先でするような挨拶で出迎えた乱太郎が、椿に似たわさわさした枝から葉をむしりながら、入ってきた2人を見て首をひねった。
「食満先輩と田村先輩がご一緒ですか。珍しい組み合わせですね」
「チーム牡羊座だ」
しれっと留三郎が答える。
いつも火鉢で治療や薬湯に使うお湯を沸かしている医務室は、ほっとするような暖かさがあふれていた。怪我人や病人が衝立の向こうで休んでいる気配もなく、それならきり丸と伊作先輩も入れてくれなくちゃー、と呑気に笑う乱太郎の他に保健委員の姿は見当たらない。
「ひとりで当番か?」
尋ねる三木ヱ門の声が話し疲れてひどく嗄れているのを聞いて、乱太郎が驚いた顔をした。その顔が引き締まり、枝を置いてさっと立ち上がる。
「三反田先輩もですが、水を汲みに行ってらっしゃいます。食満先輩はいま村からお帰りですよね。生姜湯を用意しますからお二人とも飲んでください。用意の間に泥を落としておいてくださいね」
てきぱきと言いながら火鉢にかけた鉄瓶から桶にお湯をあけ、手拭いと一緒に留三郎に突き出すと、反対側の壁際に寄せてある薬棚のところへ行って、引き出しを手早く開け閉めして小脇に抱えた鍋にあれこれ放り込む。
「……しっかりしてる」
床の円座にちょこんと座った三木ヱ門が呟くと、お湯が飛び散らないように気をつけて顔を洗っていた留三郎は、
「あれも責任感だなぁ」
と笑いを含んだ声で言った。
一瞬、目の前の後ろ頭をそのまま桶に押し込みたい衝動が駆け抜けて、三木ヱ門は奥歯をゆっくり噛み締めてそれをやり過ごした。
結局、留三郎に再点火したのは、三木ヱ門が何の気なしに使った「勝負」の一言だった。
勝負に負けて予算をすっからかんにしたために今月は学外で手間稼ぎ三昧の毎日で、今日は今日で腹の立つ相手との理不尽な勝負に勝ってやっとのことで仕事の代金を奪取した、このうえ後輩がまた何か勝負をしているのか!? と思って「ついムッとした」と、三木ヱ門の舌を噛みそうな早口の話を聞き終わったあと、留三郎は頭を掻いた。
「医務室は暖かい。急患がなければ人が少ない。大声じゃなければ喋っていても怒られない。外聞を憚る話をするにはいい場所だろ? ……湯に沈めるのは勘弁しろ」
三木ヱ門が胸の前に挙げた両手をひらひらさせると、下を向いたまま水面にそれを見たらしい留三郎は急いで付け加えた。