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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「……っつださん?」
呼び掛けが宙に浮いて立ち竦む三木ヱ門の目の前で、小松田はまるで衣服に火が点きでもしたかのように跳ね回り、身体をよじって懸命に背中へ手を回し何かを振り払おうとしている。ハッとした三木ヱ門が慌てて駆け寄り、小松田の背中に張り付いた黒っぽいかたまりを払い落とすと、それはさんざん蹴散らされた枯葉の上にぼとりと重量感のある音を立てて落ちた。
「あぁあ、びっくりしたあ……あーあ、掃除やり直しだぁ」
「小松田さん? 大丈夫ですか?」
「あれ、田村くん、いつからいたの?」
ぶつぶつこぼしながら箒を拾った小松田が、そこに立っている三木ヱ門を見て目を丸くする。
呑気な事務員に苦笑いを返し、枯葉の小山に半ば埋もれている一束の縄のようなかたまりを及び腰で覗き込んでみると、真上へ差した三木ヱ門の影に反応するように、縄の一端がゆらりと持ち上がった。
丸く小さな目とまともに目が合う。
「蛇だ」
三木ヱ門の呟きに答えるように黄褐色の蛇は三角の頭を縦に振り、シューッという微かな音と共に、大きく裂けた口から長い舌をちろりと伸ばした。
樹上から飛び降りたのか落ちたのか、ダイブを決めたらたまたま下にいた小松田の背中へ飛び移ってしまったらしい。完璧な無表情から感情を読めるほど蛇との付き合いは深くないが、この後どうしようと困っているように見えるのが何となく可笑しい。
「人を見ても逃げないね。生物委員会の蛇かな」
目玉だけを動かしきょときょと辺りを見回す蛇を遠巻きに眺めて、箒を抱えた小松田が言う。
「と言うより、伊賀崎孫兵の私物でしょう」
ペットのジュンコまでも猿の捜索に駆り出しているようなことを三治郎が言っていた。
人の目の届かないところに潜むネズミや鳥の雛を獲って食う蛇は確かに優秀なトレーサーだ。とは言え文字通り手も足も出ないのだから、いざ猿を見つけた時にどうやって確保するのか想像もつかない。しかし、あの孫兵ならそれくらいの芸当は仕込んでいそうだ。
お前も大変だな、と思わず鼻面を撫でてやりたくなったが、蛇はもたげていた頭を急に低くすると、地面を滑るように這ってあっという間に植え込みの向こうへ消えた。
「ところで田村くん、今から外出? 届けはある?」
サイドワインダーが箒の柄を握りしめてきらりと目を光らせる。
今の時間、何人たりとも勝手出入りは許さじとばかりに正門はぴったり閉ざされている。三木ヱ門は急いで両手を振った。
「違うんです。出門票を見せて頂きたくて」
「そうなの? いいよ、ちょっと待ってて、向こうにあるから」
呆気なく踵を返す小松田の後ろでこっそり冷汗を拭う。
正門脇の潜り戸の前へ置いた籠に手を突っ込んでかき回し、「あったよー」と紙挟みを取り上げた小松田が、吹っ飛んだ。




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