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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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六年生が実習をしている近くにくのいちが居合わせたのか、偶然通りかかったのかは分からないが、文次郎に変装して遊んでいた小平太は実習で使った白粉を――塗ればぬりかべのようになる白粉を指して、「難が隠れるから使ってみるか」と言ったのだろう。
女の子たちが日々、寄ると触ると美白だのダイエットだの美容の話で盛り上がるのを知っていたから。
おそらく、かけらほどの悪気もなく、本気の親切心から。
小平太は失礼なことを言った自覚がないから、自分の発言が文次郎に災厄をもたらしたとも思わない。だから怒れる山本先生の呼び出しを伝えた時も、困惑する文次郎に「一体何をやらかしたんだ?」と言い放つくらい、完全に他人事だったのだ。
だがしかし、今なお絶世の美女と名高い平安の女流歌人・小野小町は美人な上に色が白いのであり、色白だから美人なのではない。
「"色の白いは七難隠す"って諺、あんまり褒め言葉じゃないですよね」
化粧がどうとは説明しないままの三木ヱ門の話しぶりはひどく脈絡がないにも関わらず、のけぞった姿勢から元に戻った雷蔵は律儀に頷いた。
「褒めるより、慰め……かな。え、まさかそれらしい事を言ったの?」
「その、まさか、です」
ちょっとばかりアレがコレでソレでも肌さえ白かったらまあまあイケるって! と、お年頃に差し掛かったくのいちの女の子と、お年頃の坂を上り詰めて今はもう――と思われる山本先生に、言ったとしたら。
顔を見合わせた三木ヱ門と雷蔵は揃って震え上がった。弾みで雷蔵の腕から巻物が一本こぼれ、慌てて空中で捕まえる。
「そうだ。庵に行かなくちゃ」
「用事の途中なのに、お引き留めしてしまって申し訳ありません」
「先に声をかけたのは私だよ」
君のせいじゃないよ、と言って軽く笑う。
「学園長先生、ご友人の熱弁を聞いて何か思いつかれたらしいよ」
「ええー……。特別講座で何をされたんですか?」
「ご友人というのが、知る人ぞ知る学者さんでね」
言い換えれば、ごく一部を除いて全く無名ということだ。
「十五歳でその道を志してから今に至るまでの一代記を拝聴したんだ。論語に"吾十有五にして学志す"ってあるだろ? ひとつ足らない十四歳のうちに、将来の参考として先人の話を聞くべし、って」
「……為になりました?」
そう問われて、雷蔵は実に正直な表情をした。
「うん……まあ、その方がお書きになった自伝が近々図書室に入るから、興味があったら読んでみるといいよ」
それって結局自伝の宣伝に来たんじゃないですかと言おうとした三木ヱ門に、雷蔵は無言で諦観漂う目配せをした。





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