もはや短期集中じゃなくなってるけどどうしましょうねコレ…。
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気分転換だと言っていたから今頃はまた他の人になってるかもしれないと言って、雷蔵はひょいと三木ヱ門に背中を向けた。腕をすり抜けそうになった本を下から器用に膝で押し上げ、元の位置に戻して、また向き直る。
そして吹き出した。
「顔の体操?」
両眉を吊り上げ、すぐに眉根を寄せ、口を尖らせて頬を膨らませ、今は痩せこけた人のように頬をすぼめていた三木ヱ門は、ポンと口を開いた。
「竹谷先輩、本物のほうは、今どちらかご存知ですか?」
「今日は委員会だって言ってたけど、虫捕り網を担いで正門の方に走って行くのを見た後は知らないな」
それは放課後間もなくのことだと言う。
三木ヱ門が鹿子の手入れを始めたのも同じ頃だ。それから小半刻(30分)もしないうちにあのどたばた騒ぎがあって、そのあとに来た虎若たちは、八左ヱ門は裏山に猿を探しに行ったはずだとこそこそ話していた。
やや不審そうに、もう戻って来てる、とも言った。
だだっ広い裏山で小さな猿一匹を捜索するのに、そんな短時間で見切りをつけるものだろうか、と考えると――学園の中で左門を探すのでさえもっと時間がかかるのだ。ちょっと考えにくい。
と言うことは。
「あの竹谷先輩は鉢屋先輩だったんだ」
文次郎には「本物の竹谷だ」と強弁していたが、三郎だとばれたらそのまま縊られかねない勢いだったのだから、情状を酌量されるべきだろう。それに。
「私が何をしたと言うんですか――俺が何をしたってんだ……何もしてない……」
文次郎に「鉢屋はどこだ」と締め上げられた八左ヱ門の顔の三郎も、白塗り顔のまま山本先生に呼び出しを受けた文次郎も、何も身に覚えがないのだ。
「あのー……訳が分からないよ」
ひとりで呟きながら納得している三木ヱ門に、雷蔵が困り顔をした。