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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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そう言えばこの2人は煙硝蔵の方からここまで校庭を歩いて来たようだと思い出し、手拭いの包みをしっかりと懐に収めながら尋ねてみる。
「話は違うんだけど、用具委員の作兵衛か、生物委員の誰かを見ませんでしたか」
「会計が、他の委員会に何の用ですか」
つっけんどんだが妙に素早く、三郎次が問い返した。腕に抱えている在庫表らしい紙の束をぎゅっと胸に引きつけて片足を軽く引き、自然と半身の体勢に構えている。
攻撃する気配を発したつもりはない三木ヱ門は鼻白んだ。
「質問に質問で返すな。伝えなきゃならんことがあるんだ」
「それって会計委員会の話?」
首を傾げてタカ丸が言う。人当たりの良い笑顔を浮かべたままだが、心なしかこちらもさっきより口元の線が硬い。
そうじゃなくて――と言おうとして、三木ヱ門はその言葉を舌先で溶かし、開きかけていた口を閉じた。
火薬委員会が提出した今月の収支報告書には少し気になる点があった。口頭で確認すれば済むことだと軽く考えていたが、いやに会計委員会の動きを気にしているあたり、なにか良からぬ気配を感じる。
「まあ、知らないなら、自分で探します。大事な話だし」
質問に答えず、含みのある言い方をしてあっさり引き下がると、火薬委員たちはかえって落ち着かなくなった。ちらちらと三木ヱ門や互いの顔を見ては、どう出るべきか決めかねる様子でしきりに瞬きをしている。
「目が乾くなら医務室に行くといい。空気が乾燥して目病みが増えたから、良い目薬を調合したそうです」
「そう? そうだね、木枯らしで砂や埃が飛ぶもんね」
気弱げに笑って、タカ丸が目をしばしばさせる。
「ええ。それにこの季節は、実習で使う火器の硝煙や破片がひどく飛び散るから――宝禄火矢とか、鳥の子とか」
「行きましょう、タカ丸さん。早く土井先生の所に目録を持って行かなくちゃ」
急に三郎次が強い声で言い、タカ丸の袖を引いた。
「ああ、うん、じゃあまたね」
ひらひらと手を振るタカ丸を三郎次が追い立てるようにして、火薬委員たちは足早にその場を離れて行く。建物の角を曲がってその姿が見えなくなってから、三木ヱ門は呟いた。
「……あれじゃ、やましい所があるって言ってるようなものだ」
これは気合を入れて早急に追求しなければなるまい。
潮江先輩が山本先生のもとから無事に戻って来たら、だけど。




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