凝ったつくりの細い組み紐が、花弁の多い一輪花を模した飾りの左右から一本ずつ垂れていて、これはどうやら括り付けるためのものらしかった。
つくづくと眺め、へえ、と嘆息したタカ丸が、飾りを指さした。
「触ってみていい?」
「どうぞ。僕のじゃないけど」
「へーぇ」
タカ丸が慎重に飾りをつまみ上げるのを待つ間、三木ヱ門は頓狂な声を上げた三郎次をじろりと睨んだ。
恐れ入る様子もなくそれを見返して、三郎次が肩をすくめる。
「先輩の"連れ"はみんな女の子なんでしょ。そのカノン砲に付けてたんじゃないんですか?」
「鹿子たちは飾り立てるまでもなく綺麗だ」
真顔で即座に言い返されて二の句が継げなくなった三郎次に、ためつすがめつして飾りを検分していたタカ丸が笑って言い添える。
「それに、忍たまが持つにしては、ちょっと高価かなあ」
意匠は若い女の人向けだけどねと、髪結いらしい意見を付け加える。
親指の爪ほどの小さなまるい台は漆塗りで、2枚の葉っぱが螺鈿細工で描かれている。その上に留めた花は糸に通した色とりどりの透明な玉と真珠で象られ、つやつやした組み紐は色鮮やかな絹だ。
「めのうとか翡翠とか、ちっちゃいけど真ん丸にきれいに磨いてあるし。瑠璃なんて唐より向こうの土地じゃないと採れないもの。買おうとしたら高いよお」
おどけて言って、うやうやしい手付きで三木ヱ門の手に返す。
しかし、返されても困るのだ。
とりあえず傷がつかないよう手拭いにくるもうとして、文次郎の首に結んだふくら雀に押し込んでしまったのを思い出した。懐に片手を入れて渋い顔をした三木ヱ門に、察し良くタカ丸が自分の手拭いを差し出す。
「カラスがどこかのお屋敷で盗って来て、ここに落としていったんですかね。カラスは光るものが好きだから」
派手な柄の手拭いで丁寧に飾りを包む三木ヱ門を横目に、三郎次がタカ丸に話し掛ける。苦笑したタカ丸はまず隣に立つ三郎次を見て、それから三木ヱ門に目を移しつつ答える。
「そうかもねえ。でも、そうしたら、落とし主を探すのが大変だね」
「……とりあえず、話を聞く心当たりはひとりいます」
作兵衛はどこに行っただろう。
生物委員にも早く会わなきゃいけないし、忙しい放課後になっちゃったなあ。