忍者ブログ
. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
文責
written by 大鷲ケイタ
バーコード
忍者アナライズ
04
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

※例の如く非公開保存になってましたごめんなさい……。(3/23)

熱があってふらふらしている留三郎に、子供のように口を尖らせて絡まれた時だ。
相手を困らせることで甘える――どこまで受け容れてくれるか測る――というやり方は何も子供の常套手段とは限らないが、それを仕掛けられやすい人物、というのはどの年代にもいる。そういうヒトは「甘ったれる」と「頼る」の見極めができないと、知らず知らずのうちに辛い立場に陥れられたりもする。
その点では文次郎は受容範囲がきっぱりしている。度が過ぎれば厳しく拒絶するし拳骨も飛ぶ。
だからこそ、その呼吸を心得ている者からは「甘えられやすい」。
……と、仙蔵曰く"文次郎の待遇がやけに甘い"三木ヱ門は、この放課後の一連の騒動の中でそのような知見を持った。
それが当たっているのかどうは知らない。
でも。
「俺はそう面倒見がいい方じゃねぇんだが。……鉢屋、俺と田村はこれから仕事があるんだよ。だから離れろ。お前を引きずっていくのは手間だ」
「……」
無言の三郎は首を振って拒否したようだ。文次郎が天を仰ぎ、勘右衛門はけらけらと笑う。
「あはー。先輩、苦労性ですねえ」
「何とかしろ、尾浜。いい加減重い」
「無理でぇす」
「あ! 庄左ヱ門と彦四郎!」
三木ヱ門が突然大声を出した。
文次郎と勘右衛門はその声に驚いてぱっと三木ヱ門の方を見たが、三郎の動きは違った。しがみついていた文次郎から弾かれたように離れて飛び退り、左右に目を走らせもせずに、頭から廊下の下へ滑り込む。
それきり、しんとしている。
「どこかにウチの一年生がいた?」
きょろきょろ周囲を見回し、目につく範囲に人影らしいものがないのを確認して、勘右衛門が首をかしげた。
「すみません。見間違えたみたいです」
「間違えたって。お前、目はいいだろう」
平然と答える三木ヱ門に文次郎はきょとんとして、勘右衛門は笑い出した。
三郎は下級生、特に一年生の前では格好を付けたがる。中でも委員会の後輩である庄左ヱ門たちの目には、六年生にとりすがる姿など面子にかけても晒したくないだろう。だからその名前を出せばきっと速やかに離れる、――という計算だけではない。
ウチの委員長が他所の五年生に困らされているのを見るのは「やだ」。
不思議と洞察の鋭い勘右衛門にはその辺りの考えを見抜かれたかもしれない。それでもいいや、といくらか自棄になって、三木ヱ門は解放された文次郎の腕を引いた。


Copyright c 高札場 All Rights Reserved
PR
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]