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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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――別に何も異変は起こらない。
黙ってにこにこしている勘右衛門に「今のは何ですか」と尋ねようとした時、三木ヱ門の耳に小さな羽音が聞こえた。
ひとつではない。二つ、三つ、四つ――次第に数を増し、羽ばたきが重なって耳で追えなくなる――その音の集団がどこからか近付いて来る。
「ひゃあ!?」
咄嗟に腕で顔を庇った三木ヱ門の傍らを掠めて、水中の魚群のような影がざあっと廊下へ舞い降りた。
「そんな悲鳴を上げなくても大丈夫だよー。危なくないから」
のんびりした勘右衛門の声に恐る恐る腕をどけてみると、濃淡の茶色と白と黒が入り混じったふくふくと丸まっちい小鳥の一個小隊が、廊下の上からそろって無表情に三木ヱ門を見上げていた。
その黒目がちな目玉の数は目視でおよそ六十対。
辛うじて悲鳴は飲み込んだが、それでもうなじの毛がびりびりと逆立った。
「……す、すずめはちっちゃくて可愛いと思っていたのに」
集団になると――いや、数が多いだけならなんと言うことはない。が、気まま勝手に飛び回っているのが当然のすずめに一糸乱れぬ集団行動をされるのが、これほど不気味だとは知らなかった。
「えー? 可愛いじゃない。それに結構、頭いいんだよ」
くきき、と首を傾けて異議を唱える勘右衛門の動きまで鳥っぽい。
すずめの群れから目を逸らし気味に、しかし勘右衛門と向き合うのも気後れがして、やや半身になりながら三木ヱ門はこわごわ質問した。
「賛同しかねます。……あの、このすずめたちはひょっとして、作法委員会の忍雀では」
「その通り」
あっさり認めた勘右衛門がもう一度無音の指笛を鳴らした。
三木ヱ門には聞こえないその音に従うかのようにすずめたちがぱたぱたと隊列を変え始める。その動きは一見、よく訓練された曲芸のように見えて、予備知識さえなければ微笑ましいと言っていい光景だった。
喜八郎から「忍雀の報告は組体操でブロックサイン」と聞いていなければ。
「……何故、尾浜先輩が作法委員会の忍雀を操れて、報告を読み取れるんですか」
「それは――」
「うわぁあっ!」
動き回るすずめたちを眺めて訳知り顔に頷く勘右衛門に三木ヱ門が低い声で問いかけ、にっこり笑って答えようとした勘右衛門を、三郎の裏返った悲鳴が遮った。
何事かと振り返ると、三郎は困惑顔の文次郎の背中にしがみついて精一杯体を縮めている。

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