その反応に、三木ヱ門の方も目をぱちくりさせた。
「……何か、おかしなことを言いました?」
はい、と言っただけなのに。
瞬いた目を指先でこすって、文次郎は少し困ったような顔をした。しかし口元は笑おうとしている。声を上げる呵々大笑ではなく、ふとした拍子に自然とこぼれる小さくて穏やかな笑みだ。
珍しい……じゃなくて、何か、笑われるようなことをしたっけ?
そちらにも心当りがない。
結局、どっちつかずの困り笑いの表情になって、文次郎が言った。
「素直だな」
「私がですか」
三木ヱ門は思わず自分の鼻を指差した。そりゃまあ陰険ではないつもりだし、ひねくれ過ぎてもいないという自負はあるけれど。
「猿は二回逃げた」
二、と言いながら文次郎が右手の指を二本立てる。それを見て三木ヱ門ももう一度頷く。
「はい。そうでした」
「――ってことを、どうして俺が知っていると思うんだ?」
「へ?」