ずれるどころか大幅に迂回した挙句迷路に突っ込んだような心持ちになっていた三木ヱ門は、話が本筋に帰って来たらしいことにほっとしつつ、手を上げて乱れた髪を撫でつけようとした。
はたとその手が止まる。
ほっとしている場合ではない。
小猿の素性についてはとうとう口を割らなかった八左ヱ門は、文次郎に真実すべてを語ってはいないが、その代わり嘘も言ってはいない。しかし、ようやくのことで小猿を捕獲した生物委員たちを見送った文次郎が「嘘を言いやがって」と呟いた時、三木ヱ門は心臓が縮むほどどきりとした。真相から遠ざけようという意図を持って口を閉ざすのも「嘘」の一種ならば、文次郎はそのことに気付いているのかと思ったからだ。
「竹谷先輩は……、稀有なくらい真っ正直な方だと思いますが」
そんな人が嘘なんてつきますか、と反意を含んで言ってみる。
束ねた髪を扱くように引っ張りながら、文次郎が頷く。
「そうだな。良くも悪くもあいつは捻れたところがない」
「捻れていないことは、悪くもありますか」
「正直過ぎるのも考えものだ。忍者でなければ美徳だが。猿はニ回逃げたんだろう?」
「はい」
さらりと尋ねられた三木ヱ門がこっくりすると、文次郎は一瞬、つと目を瞠った。