ごく軽く叩くように、頬に指先が触れる。
三木ヱ門は反射的に息を詰め、ぎゅっと目をつぶった。
顔の輪郭を滑り鼻先へ落ちかかる前髪をすっと払い除けて額にほの温かい手が添えられ――その手が動いて、警戒で髪が逆立ちそうになっている頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。
「うえ?」
予想していなかった突飛な出来事に、三木ヱ門の口から変な声が漏れる。しかし文次郎はお構いなしに、荒っぽいくせにどこか優しげな手つきでぐらぐらと頭を揺らす。
それでもまだびくつきながら三木ヱ門がそおっと目を開いてみると、文次郎は妙に真面目くさった顔をして三木ヱ門を見ていた。
こましゃくれたことを言う左吉を撫でた時、手は伸ばしながら「お前を撫でるのは何か違う」と言って、途中でやめたのに。
戸惑う三木ヱ門の表情を見て取ったのか、文次郎がにやりとした。
「何をされると思った」
「え」
口に出せる訳がない。
「……。ぶ、ぶたれるのかな、と」
「そんなに暴力的な印象か、俺は」
信用がねえなと苦笑交じりにこぼす。
「田村に信用して貰うのはなかなか難しいな」
「え!? いやっ、あの、してます。しています!」
「ああ、うん。お前の言わんとすることは分かる。そうだけど、そうじゃねえ」
言葉遊びのようなことを言い、まあいい、と問答を終わりにしてしまう。つむじの辺りをとんとひとつ小突いて、撫で回していた手も離れた。
「話がずれた。嘘を言った、ってのは竹谷のことだ」