焚き火に放り込んだ何かが思いがけず大きな音を立てて爆ぜたので、何がどうなったのだと、くすぶる落ち葉の山を恐る恐る覗き込んでみる。
そんな様子で文次郎は引いたまま三木ヱ門を窺っている。
棒立ちになった三木ヱ門はのろのろ両手を上げて顔を押さえ、呻いた。
「……私は欲張りになりました」
文次郎が訝しげに目を細める。
「なんか急に欲しいものでも思い付いたのか」
「そうです――いえ、そうじゃないけど、欲しいもの……なのかな……です、はい」
「それにしたって叫ぶこたぁねえだろうよ」
呆れたように文次郎が言うが、これが大声を出さずにいられようか。
委員長の右腕とまでは言わない、しかしいずれは有用な戦力として認めて欲しい、という謙虚な願いを抱いていたのはほんの何刻か前までの話だ。それが「信用している」「頼りにしている」の言葉を貰って感激した途端、今度はそれが自分に――自分だけに――向けられるものではないことに不満を感じるなんて。
……先輩の信用を独り占めしたい、特別扱いされたい、とか考えていたなんて。これも食満先輩が言うところの独占欲なのか?
「うわ……」
もう一度叫びそうになって、寸前で踏みとどまった。
役に立てている確証がなくてぐだぐだ悩んでいたのに比べれば、信頼を得ている後輩のひとりという立場が分かっただけでも十分じゃないか。
と頭では考えているのに感情がついていかない。やだやだやだ、と三つの幼子のように駄々をこねている。
「百面相になってんぞ」
自分の顔をちょいと指して文次郎が言う。頬に手を当てて三木ヱ門が眉を下げる。
「……自分が情けないです」
「ふーん。……言葉だけじゃ足らねえか」
「え?」
きょろきょろと辺りを見回して周囲に人気がないのを確認すると、文次郎は三木ヱ門に向かって腕を伸ばした。