分かりやすく例えようとしたら要点がずれてただの散漫な話になった。
説明が下手な人にはよくあることだが、発言はいつも単純明快を旨とする文次郎にしては珍しい。どさくさに紛れてちょっと良いお菓子をせしめることに成功してしまったようだし。
懐に突っ込んである破れた手拭いに上衣の上から触れながら、三木ヱ門は首を傾げた。
「ええと、つまり、私がすずめの形に作ったものを、すずめでなくしてしまうのが忍びなかった……と?」
「概ねそんなところだ」
ぽんと音を立てずに手を打ち合わせて、文次郎が頷く。
「……これも今更ですけど、お嫌ではなかったですか、ふくら雀」
さっきの唐輪髷ではないが、さして深い意味もなく「出来そうだからやってみた」しろもので、学園一忍者している男の文次郎の風体に可愛らしい飾り結びが似合うかどうかなどよく考えなくても明白だ。こわごわ尋ねてみた三木ヱ門に、文次郎は「嫌なら外した」と、こっちは簡単に答えた。
「あれを結んでいたおかげで猿に噛まれなくて済んだしな。まともに噛み付かれたらどうなってたか、分かったもんじゃねえ」
もともとは固いものを主に食べるのか、あくびをした時に見えた小猿の歯は粒は小さくとも丈夫そうに尖っていた。あれを勢い良く首筋に突き立てられていたら今頃はきっと愁嘆場で、とてもこんな呑気な会話をしてはいられなかっただろう。
「結局、左吉は小猿を撫でさせてもらえたんですかね」
それが叶わなければ一生の悔いになると八左ヱ門に直訴した顔の真剣だったこと。
自分の右手を見て三木ヱ門が何気なく言うと、文次郎は小猿に踏みつけにされた肩の辺りにふと手をやって、少し考えるふうにした。