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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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耳が塞がっていたから聞いていなかった――
のを期待したが、そうでもないようだ。文次郎は下ろした手のやり場に困ったように左右の袖で交互に手のひらを拭い、そのまま胸の前で腕を組んだ。
「俺はお前と同じ、当たり前の人間だ」
「はあ、――はい」
「そんな怖れ憚られるようなご大層なもんじゃねえよ。むしろ欠点だらけだ」
組んだ腕を体に引き付けてぶっきらぼうに言う。
そうですねとも相槌を打ちかねて、曖昧に言葉を濁しながら三木ヱ門は自分の耳朶を指の先でこねる。
文次郎は機嫌を悪くしてはいない。しかし、これ以上何を言われても驚くまいと守りを固めたような気配は感じる。――そうか腕を組んだからだ、と、今の失言をどう取り返したものかフル回転中の頭の隅でちらりと考える。
左門が「面倒」をかけなかったかと尋ねた時の木下と、なぜ渡り廊下にいたのかと問い詰めた時の雷蔵、どちらも話しながら何気ない仕草で腕組みをした。それは特に意味のない動作であるのが大抵だけれど、"攻撃"を避けようとして無意識に体を庇っている場合もある――あれ、そう言えば、つづら代のことをごまかした時に伏木蔵の前で腕を組んだっけ。
マズった。
首元まで垂れた飾り結びのしっぽに耳朶をいじる手が当たり、緩みかけていた五弁花が半回転したのを元の位置に戻して、意外と鋭い伏木蔵に何か悟られていたらどうしようと今更ながら考え込む。
「それ、外しちまえよ」
「はい?」
「邪魔だろ」
飾り結びを指した文次郎がひょいと腕を伸ばそうとして、三木ヱ門は思わず後ずさった。
「あー。嫌です、このままでいいです」

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