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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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小柄な井桁模様がひとつ、ふたつ、みっつ。
「鼻垂れだ」
左門が言った途端、「ぶえっくしょい」と威勢のいい音を立てて、人影のひとつがくしゃみを放った。
「用具委員か? 何をしているんだ、そんな所で」
「それがですねー」
がさがさと植え込みを割って出て来た用具委員会の一年生3人は、揃いも揃って十歳児らしからぬ世にも不景気な顔つきをしていた。
「僕たち、今月は、学園の外でバイト三昧なんです」
ずずっとひとつ鼻をすすって、しんべヱが訴える。
「お寺の鐘つき堂の撞木を取り替えたり、本堂の壁の穴を塞いだり、」
「神社のお社の雨漏りを修理したり」
「農家のおばちゃんの穴が開いたお鍋を打ち直したり……今はひと休み中だけど、もー、くたびれちゃいました」
喜三太と平太も口々に言い、顔を見合わせて、地の底まで沈み込むような深いため息を吐く。
読めるものなら読んでみろと言わんばかりの字で書かれていた用具委員会の今月の収支報告書を思い出して、三木ヱ門は「ああ」と納得した。月の初めに当月分予算が一括支出になっていて、その穴を細々とした外部収入――つまりバイトで補っていたんだっけ。
「添付の領収書は福富屋の発行で、消耗品代として、としか書いてなかったなあ」
大貿易商の御曹司は三木ヱ門のわざとらしい独り言を聞かぬふりをして、左門にもらった鼻紙で力強く鼻をかんでいる。
支給した予算が適切に使われているかどうかの会計監査は、今後申請される予算を受理するか否かの試金石になるだけに、会計委員会もその他の委員会も神経を使うところだ。
少しでも予算を抑えたい会計委員会は鵜の目鷹の目で無駄遣いを探すし、各委員会は逆に少しでも多く予算が欲しいから、あの手この手で抜け道を探す。
詳細の記載がない領収書など胡散臭いことこの上ないのだが、福富屋の領収印は確かに本物なので、いかな地獄の会計委員長とて百戦錬磨の豪商の元へ乗り込んで売買内容を問い詰める事はできない。止めなければやるかもしれないが、それよりは用具委員長の口を割らせる方向で動くだろう。
「しんベヱの家は何でも扱ってるよね」
2人の会計委員の疑惑の眼差しをいなすように、平太がのったりとした口調でしんべヱに話を振った。
「うん。つまようじから安宅船まで、色々あるよ」
「ねえねえ、ナメさん用の栄養食品ってある? 越冬の体力をつけなくちゃならないんだ」
「……それは、ないかなぁ」




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