それでも、なおもしげしげと自分を見上げている三木ヱ門に、軽くため息をついて口元を曲げる。
笑ったのでも不満を示したのでもない。やや尖らせた唇には、拗ねたような色が浮かんでいた。
「俺にだって言いたくないことくらいある」
「でしょうけども」
「言わねえぞ」
取り付く島がないが、しかし。
首を左に右に傾けつつ、三木ヱ門はじっと先輩を観察する。
「私は今日、不破先輩に会うごとに涙目なところを見られていたんですが」
不思議そうな口振りで後輩が何を話し出すのかと文次郎がわずかに身構える。そして、「三木ヱ門に意地悪をして泣かせてはいけない」と未知のぬるぬるで機嫌の良くなった雷蔵に朗らかに注意されたのを思い出したのか、ふらっと目が泳いだ。
「医務室でそんなことを言ってた」
「はい。くしゃみ泣きだったのに、泣き虫みたいで決まり悪かったです」
「だろうな」
「私は今日、」
ついさっき言ったのと同じ台詞を口にしながら、三木ヱ門の視線が文次郎の顔から少し横に移動した。
「先輩の耳が赤くなるところをしばしば見かけます」
「……な、」
「ほら」