感に堪えぬとばかりにしみじみ呟き、深く納得した様子で小刻みに首を振る。ぽかんとする三木ヱ門にタカ丸はきりりとした顔を向け、口元には一瞬慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、「大丈夫だからね」と力を込めて宣言した。
「そんなことになってたなんて、ごめん、知らなかったよ。絶対絶対誰にも言わないから!」
……いや、僕も知りませんけども。
一体何を言ってくれたのだと三木ヱ門は白目を剥きかけて文次郎を振り返るが、文次郎は裏々山のカラスの巣でも数えているような思い切り遠い目をして知らん顔だ。同じくやり取りを聞きそこねた三郎次も顔いっぱいに疑問を浮かべていたが、問答を許さない勢いのタカ丸に「ね!」と強く促されて、曖昧に首を動かした。
「別にいいですけど……何が何だか」
「はい、それじゃ僕らは立花先輩にお届け物に行こう。さあ行こう、早く行こう」
地面に置いていた木箱を持ち直し、先輩がお待ちかねだよと三郎次を急き立てて、タカ丸は忙しなくぺこんと頭を下げてばたばた駆け出して行く。すれ違いざま、三木ヱ門に向かって訳知り顔にぱちりと片目をつぶってみせさえした。
唖然としてふたりの後ろ姿を見送り、その影も見えなくなって更にもう少し経ってから、三木ヱ門はぎりぎりと首を回して横を向いた。
「どうやって言いくるめたんですか……と言うか、何を仰ったんですか」
明日の朝まで洗うなと伊作に厳命されている頬を指先で掻きつつ、文次郎は横目で上目遣いをする三木ヱ門から目を逸らしている。
「そんなことってどんなことですか」
「……」
「ねえ、先輩」
「……多少尊厳を削った」
「……」
「俺の、な」
「何の話を――」
「内緒だ」
やっと三木ヱ門と目を合わせた文次郎はそっけなく遮った。