相手にすると鬱陶しいし、何かと張り合ってくるのが憎たらしいし、できるものなら姿を見かけ次第こっちに来るなと追っ払ってしまいたいくらい嫌いだ。体育委員長に率いられたウルトラマラソンが3周目に入り、気取る余裕もなくしてへろへろになっているのを見かけたら、ざまあみろと心の中でちょっぴり笑う。どうせ滝夜叉丸だって、10kgそろばんを担いで半分泣きながら冷たい池に沈んでいる会計委員会を見たら、同じことをするに違いないのだし。
だけど、自分に面倒くさく関わってこなければ、別にそこに居たっていい。
この世からいなくなってしまえとまでは思わないし、命が危ういくらい酷い目に遭っている現場に出くわしたら、放っておくことはたぶん出来ない。
――とぐちゃぐちゃ考える前に、三木ヱ門は答えていた。
手早く紐を結んだ文次郎が、真顔の三木ヱ門を見てにっと笑う。
「だろうな。お前の"嫌い"は、骨が多いから鮎は嫌いだと言うのと似たようなもんだ」
「私は鮎は好きです」
「知ってる。物の例えだ」
「……それでは食満先輩は、先輩にとっての鮎なんですか」
骨が多くて食べ辛いから積極的には手が出ない。でも、食べれば旨いことは知っているから、鮎なんていなくてもいいのにとは思わない?
「俺はあの野郎くたばっちまえと思ってるよ、常に」
束ねた髪をぽんと弾いて、文次郎は本気とも冗談ともつかない調子で言った。