かたかたかたと寸刻みに首を回し、何故か文次郎を見た。
「ちっちゃい子」だと思っていた後輩の強い主張に戸惑って、似た立場の同級生に思わず助言を求めた――とするならば、潮江先輩はこの状況で何を仰るだろう?
三木ヱ門がこっそり横顔を窺うと、鼻にしわを寄せた文次郎はなんと、留三郎に向かってあかんべえをするように舌を出してみせた。
それを見た留三郎は目を丸くした。が、三木ヱ門の予想に反して怒りだしはせず、大きくなった目の中で瞳がきりきりと動いて三木ヱ門を見る。
視線がかち合う。
留三郎がそのまま首をかしげ、釣られて三木ヱ門も首を傾けると、留三郎の顔にじわりと苦笑が広がった。
「朴念仁か。なるほど、朴念仁だ」
伝言にかこつけて三木ヱ門が作兵衛に言わせた言葉を自嘲気味に繰り返す。そしてその場に膝を折ってしゃがみこむと、まだ頭を下げている作兵衛の顔を下から覗き込んだ。
六年生を見下ろす格好になった作兵衛は慌てて自分もその場に屈もうとしたが、留三郎が自由になった右手を上げてそれを押し止める。
「済まなかった。俺は作兵衛の意気地を大分低めに見積もっていたんだな。それに……、ええと」
言いにくい言葉を口にする景気付けなのか、ひどく痛むはずの鎖骨の辺りを軽く握った拳でとんと叩き、一瞬ぐっと息を詰めて、それから一息に吐き出した。
「用具は下級生ばっかりだから俺が面倒を見なくちゃ、って大変がってるのが楽しい、と言うか嬉しい、と言うか……、庇護欲ってぇのかな、自分のそれを優先していたきらいがある、かも」
「往生際が悪りぃぞ」
茶々を入れる文次郎に、今度は留三郎がべえと舌を出した。
「独占欲よりゃマシだろうがよ」