それは言い換えれば、危険に伴う責任を負うのは委員長である自分でなければならないという責任感の表れだ。
しかし言動が全体的にずれたままの状態で動き回られても周囲が困る。そして、三年生ながらに作兵衛には二番手の矜持があるのを、三木ヱ門は知っている。
後は任せるとか、しばらく頼むと言おうとしない留三郎に、作兵衛はぴりっと頬の線を硬くした。
「なんで先輩は俺を信用してくれねぇんですか?」
「ん?」
微妙に敬語になりそこねた切り口上で尋ねられて、留三郎は一瞬ぽかんとした。その間の抜けた表情が癇に障ったとばかりに作兵衛は首にかかっていた留三郎の腕からじたばた抜け出し、抱えていた方の腕も放り出して、キッと睨み上げた。
「そりゃ、先輩に比べたら身体は小さいです。非力です。考えも浅いし判断力もないです。だけど、一から十まで面倒を見て頂かなくちゃならないほど弱くて物識らずじゃない、ですよね私は?」
「あ、ああ? うん」
「勢いで頷かないでください!」
ならどうしろと、と言いたそうな顔で、留三郎は引きかけた顎を中途半端な位置で止める。
「そういえば作兵衛、滝夜叉丸がお前のことを"迷子ふたりをまとめて引き回すのは凄い"と褒めていた」
言ってやれ言ってやれと内心で旗を振っていた三木ヱ門が援護射撃を放つと、瞬間目を剥いた作兵衛は素早く会釈して、一段と声を勇ましくした。
「何でも任せて下さいなんてとても言えません。でも、出来ることと出来ないことの区別はできます。そんでもって出来ることは全力でやります。だから、もうちょっと――もうちょっとだけ、私を当てにして下さい」
作兵衛ががばっと頭を下げる。
留三郎の口が開いた。声は出ずに、そのまままた閉じる。