髪の毛の間にするすると指を滑らせて梳き、「柔らかいな」と独り言を言う。
「へ?」
「やり辛い」
「えええええ」
首の後ろの結び目を解いて頭巾を外された。
一体何が起きるのかと三木ヱ門が頭の中を真っ白にしている間に、文次郎は束ねた髪の房を持ち上げてくるりと輪を作り、元結に房のしっぽを巻き付けて留め、摘んでいた紙縒りをそこに結び付ける。
地面に落ちる自分の影の形と、恐る恐る伸ばした手に触れたたっぷりした髷に、三木ヱ門はきょとんとした。
「これ――唐輪髷というやつですか」
「おお。知ってたか」
「タカ丸さんから聞いたことがあります。けど、これって」
「少し髪の長さが足らなかった」
言いながら文次郎は三木ヱ門の紫の頭巾を細長く折り、元結にふんわりと五弁の花結びに結ぶ。さすがは六年生、武骨に見えても手先は器用だ。
じゃなくて!
「……さっきの五年生の先輩方みたいに薬湯の湯気でラリっていらっしゃる……」
「いや、まともに手が動いたからそこそこ正常だと思うぞ」
「ならどうして急に……」
「お前の髪を見ていたらできそうだと思ったから」
「でも、何も、これから土井先生の所へ乗り込む今じゃなくても」
「あぁ。解いていいぞ」
「え」
あっさりと言われた三木ヱ門は結い上げられた髷を庇うように、つい頭に手をやった。