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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「この後、火薬の監査に行くんだった」
「……そう言えばそうでしたね」
三木ヱ門も忘れていたが、裏予算と「鳥の子玉代」の説明は後日でいいとしても、伊作の訊問が終わったらすぐに焔硝蔵を調査すると兵助に宣言していたのだ。それなのに一年生たちは小猿見学へ行かせてしまい、文次郎は薬湯の湯気の影響でふらふらで、左門は長屋の自室から動かせない。まともに動ける会計委員は三木ヱ門ひとりだけだ。
「左門は――頑丈な縄さえあればどうにかならないでも無いかもしれませんが」
それと、今日はなんとしても作兵衛に手間をとらせないという本人の強い意志があれば、ひょっとしてもしかして迷子にならずに収まるかもしれない、かもしれない。
仮定に希望を重ねて曖昧な予測を立てる三木ヱ門に、文次郎はあっさり首を振った。
「どうにかなるものでもないだろ、あれは」
「……。ですね」
「あー……仕方ねえ、下級生は抜きだ。俺は顔を洗って目を覚ましてくる」
「だーめー」
立ち上がろうとした文次郎を伊作が阻止する。
「洗顔料の効果を見なくちゃいけないんだから、明日の朝までそのままにしておいてよ」
「態度がでけえよ」
表皮が毛羽立っている頬をつんつんと押す伊作の手を叩き落とし、俺には洗顔の自由もねえのかと文次郎が睨むと、伊作はしれっとした表情で頷いた。
「売れる洗顔料が作れたら、保健委員会に回す予算を幾らかカットできるかもしれないじゃない? 協力してくれよ」
「それ、自分の首を絞める発言だって分かってるか」
「だから、かもしれない、だよ。まだ赤剥けになるだけかも分かんないし。文次郎がぽやぽやしてても大丈夫でしょ、田村はいるんだから」
気楽そうに言って伊作がぽんと三木ヱ門の肩を叩く。
どんな表情をしたらいいのか分からなくて、三木ヱ門はとりあえず「焔硝蔵の開錠は誰に頼みましょうか」と文次郎に水を向けた。

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