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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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つい数刻前に殺気すら帯びた石礫を投げつけた者と、その攻撃から辛くも逃げ延びた者が顔を合わせている割には、あの一件はもう終わったことだと伊作も八左ヱ門も互いに承知しているのか場の雰囲気は刺々しくない。
これもお二人の性分――基本的には穏やかで大らかだ――のせいかな、と三木ヱ門はちらりと考えた。その瞬間まで何の因縁もなくても相手が視界に入るなり待ったなしで臨戦態勢になる文次郎と留三郎とは随分な違いだ。
もっともその二人にしても、反りは合わなくとも本当に険悪な仲のようには見えないのだけど。
「でしたら戻り次第、お伺いしましょうか」
見えない時間割を確認するように視線を泳がせて八左ヱ門がそう言うと、伊作は「うん」と唸った。
「でも、今日は遅くなるよね?」
「そう……ですね」
引き渡しの際に小猿の身体検査とか学園で預かっていた間の報告とか色々煩雑な手続きがあるのだろうが、八左ヱ門は言葉を濁す。
伊作は長屋の方角へ視線を向け、きゅっと眉をしかめた。
「竹谷が戻る頃には医務室は閉めちゃってるかな。長屋の僕の部屋に来て貰いたいところだけど、今日の夜は留三郎が人に見せられない状態になるから、明日の放課後に手が空いたら医務室へ来てくれるかい」
「分かりました……え? 人に見せられない、って……え?」
頷きかけた八左ヱ門がどぎまぎすると、伊作が仏頂面で「明日は留三郎も同席するかも」と付け加え、八左ヱ門はますます目を白黒させた。
「色々あって死にかけてるアヒルが医務室から逃げたから折檻するんだとよ」
「アヒル? 水練池のですか?」
文次郎の言葉足らず過ぎる説明で混乱に拍車がかかったらしい八左ヱ門は、何があったか存じませんが動物虐待はいけませんと真顔で忠告した。
「動物なんて可愛いもんじゃねえからいいんだよ。竹谷、急ぐんだろ」
「そうでした」
目をキラキラさせる団蔵と左吉を左右の袖にぶら下げるような格好になりながら、最後にもう一度ぺこりと一礼して、八左ヱ門が医務室から出て行く。
その後姿を見送る伊作がもそもそと何か口の中で言う。歌のような節が付いたそれは、三木ヱ門には「勇気と覚悟」と聞こえた。
と、目をこすっていた文次郎が「あぁ、しまった」と呟いた。

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