生物委員会では委員長代理でも、お前は五年生で、上にはまだ六年がいる。
「お前なりの矜持も意地もあんだろうが――、それを蔑ろにする気は更々ねぇが、」
話すにつれて文次郎の声は段々と小さくなり、それを聞き取ろうとする八左ヱ門は次第に前のめりになる。
「……ひとりじゃ手に余るなら余った分は上に投げろ。最上級生だからと威張っている目の上の瘤の――」
そこまで言って文次郎が不意に目を上げた。いつの間にか近付いて顔を寄せていた八左ヱ門は間近でばちっと視線が合い、思わずのように逃げ腰になった。
その首根っこを掴まえて、文次郎はにいっと人の悪そうな笑みを浮かべた。
「――手並みを拝見させてやる」
八左ヱ門の目の焦点が一瞬飛んだ。それが戻って来る前に、伊作が「回りくどいなぁ」と文句を言う。
「つまり文次郎は"下級生が困っているなら助けたいから隠さないで頼れ"って言いたいんだ」
「あの……あの、ええと、はい、あの」
言わずもがなの補足までつけた伊作の通訳に、ひどくどぎまぎした様子で八左ヱ門が口ごもる。文次郎に掴まれたままなのを後ろから引っ張って救出して、伊作はむずかる子供をなだめるように、とんとんと八左ヱ門の背中を叩いた。
「時々妙に男前なことを言うんだよね、こいつは。びっくりしちゃうよ」
「びっくり……しました、けど」
しきりに瞬きしつつ八左ヱ門がちらりと三木ヱ門を見たので、三木ヱ門はこっそり首を左右に振った。何もかも承知の上のようなことを仰ったけれど、小猿の身の上のことは潮江先輩に何も話していません――と目顔で伝える。