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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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自分ひとりの身の上の収まらない事情がくっついているだけに、絶対に事は公にできない。しかし言わずに隠すのは事情を知らぬ者から見れば卑怯そのものだ。どちらを選ぶと言い切れずに伊作が悩んでいる理由を、文次郎は知らない。
知らないはずだが、ただ保身のために悩んでいるのではないことは分かっていた。伊作がそのために決断をためらうような人間ではないと信用しているのだ。
その上で沈黙を守ることに保身以外の解釈があることを示し、伊作もそれを理解した。
信用を裏切ってくれるなよと釘を刺した、と取ることもできるけれど、八左ヱ門から聞き出した猿の一件を喋らないと言い張る三木ヱ門を「黙るだけの理由がある筈だ」と信じて受け入れた構図に少し似ている――
と気付いた瞬間、「田村を信用しているし頼りにしている」と口にした時の文次郎の様子をぱっと思い出し、三木ヱ門は思わず身じろぎした。
「やっぱり田村先輩まで……」
左吉がやれやれと言いたげに眉を下げる。
「だから僕は眠くないって」
「鏡をご覧になってください。ぽおっとしてらっしゃいます」
言い返そうとして即座に言い返された。
ぽおっとなんてしていない――とは言い返せなかった。
しかしここで言葉が出ないのも上級生の沽券に関わる、と三木ヱ門が懸命に頭を巡らせていると、表から軽やかな足音が近付いて来た。

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