……他の人にそう言ったら、あの委員長に染まって来たなと呆れられるか、可哀想にと憐れまれるかも知れないけれど。
嬉しい。
「田村がご機嫌」
なぜかそこだけしっかりした口調になって伊作がもそりと言い、三木ヱ門は慌てて口元を引き締めた。
今は文次郎がふよふよして大変な時だ。四年生の自分が緩んでいてはいけない。
「自発的に自白、かあ……」
呟いて、あちこち散らばる考えを探しているように伊作が目をふらふらと泳がせる。
保健委員長である私はこんな事をしでかしてしまいました申し訳ありませんでした――と全校に向けて公にしてしまえば潔い。しかし、それを聞かされたところで一体自分たちにどうしろと、と戸惑う生徒もいるだろう。幸運にも生き物たちが振り撒く塵や埃よりも身体のほうが強くて、偽風邪の被害を受けていない者は特に。
更に伊作が大々的に罪を告白したら、必定、伊作と共謀し且つ秘密を共有している生物委員会も道連れだ。八左ヱ門が死に物狂いで皆の目から隠し通そうとした小猿の素性も晴れて天下にさらされ、ということは学園中の首という首が万一の時はことごとく落ちる、という訳で――
「だ、」
飛び出しそうになった声を、三木ヱ門は慌てて口を押さえて止める。
伊作の目がちらっと三木ヱ門を見てそのまま素通りする。
黙っていてくださいとこの場で言ってしまうのは、伊作の為したあれこれを隠すのに協力すると表明するのに等しい。それは文次郎が繰り返し説く「正心」に背くことになるんじゃないか?