薬種の……と、続けようとした声が睡魔に引っ張られて尻すぼみに低く沈む。
「ええと、」
三木ヱ門と左吉は顔を見合わせた。同じことを考えているようだとお互いの表情から当たりをつけ、今度は左吉が言葉を補う。
「薬の原料を今までよりも安く買える伝手が出来たのなら、保健委員会が購入費として申請した予算も再検討する。……ということで、いいですか」
確認された文次郎がもう一度頷く。そして小さく笑った――ように見えた。
テストの解答にマルを貰ったとばかりに、やや勢い込んで左吉が提案する。
「今後見込める洗顔料の販売収益も、提出して頂いたほうが宜しいのでは」
「うん。……でも、それは後、でいい」
まだ売り物になるか分からない、と実験に使われた自分の頬に触れながら、文次郎はやんわりそれを退けた。
三木ヱ門はふと、自分の胸の奥でかたんと何かが嵌まる音を聞いた。
図書委員会が売れる品質のものを作ろうと試作している漉返紙は落とし紙として保健委員会に売っているだけで今はまだほとんど利益が出ていないけれど、それも報告しないといけませんかと力む久作に相対した時、三木ヱ門は困った。その判断は自分では致しかねると言うだけではなく、今後売り物にできるようなものができるかどうか分からないうちに利益見込みとして計上してしまうのは早計だ、と思ったからで――その判断は合っていたらしい。
委員長と同じ判断が、自分の考えで出来ていた。