忍者ブログ
. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
文責
written by 大鷲ケイタ
バーコード
忍者アナライズ
05
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

指でまぶたを押さえて、こちらも俯いている。
「し、潮江先輩?」
まるで伊作の告白に胸を打たれて貰い泣きしたように見えるが、驚きつつおっかなびっくりでよく見てみると、勿論違った。
「……眠い」
今の今までぴんしゃんしていた文次郎が、ふわふわした口調で何とも唐突な一言を吐く。
決算作業で何日徹夜になろうが「疲れた」とか「眠い」とかの泣き言は口にしない会計委員長の呟きに三木ヱ門と左吉は顔を見合わせた。左吉は余程びっくりしたのか、目は点になっているのに口はぽかんと大きく開いてしまっている。
三木ヱ門ははたと自分の口を押さえたが、幸い開きっぱなしではなかった。
「大丈夫ですか?」
それ以外に尋ねようがなく、口元に手を当てたまま何となく声をひそめるようにして三木ヱ門が気遣うと、文次郎は指先を額に押し当ててようやく少し顔を持ち上げた。見るからに無理をして見開いている目は黒目の周りに細い血管がびしびしと網目を描いている。
「分からん。急に、やくと……、薬湯のによ、匂いが、染みる」
呂律まで怪しくなってきた。
「目に、ですか」
苦いような甘いような、まさしく「薬臭い」という表現がぴったりな匂いはそこら中に残っているが、それは緩やかなもので決して刺激的ではない。左吉が自分の目を指して尋ねると、文次郎は大儀そうに首を振った。
「頭。……が、ぼおっとしてきた」
「文次郎は飲んでいないけど、薬湯の湯気は吸い込んでるからだよ」
そろりと頭を起こした伊作が小声で言った。

Copyright c 高札場 All Rights Reserved
PR
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]