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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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ザッと血の気が引く音がした気がして、申し合わせたように全員が文次郎に注目した。
果たして、白一色に塗りつぶされた顔面は、厚化粧を通しても分かるくらい青みが差している。皆が固唾を呑んで見守る前で、緋色の唇がくわっと開いた。
「鉢屋の野郎、くのいちだけじゃなくて山本先生にまで暴言吐きやがったのか!!」
「うん? 鉢屋がどうした?」
かくんと小平太が首を傾げる。無心に訝しがる同級生に向かって、文次郎が吠えた。
「この白粉を塗ると難が隠れるから使ってみるかとか何とか、俺の顔でくのいちの子らに言いやがったんだよ! お陰で俺は、――」
言いかけて、絶句した。
口は開いているのに続く言葉を出せずに全身を強張らせる姿に、その身に降り懸かった惨劇を想像して、小平太を除く全員が戦慄する。
「んー、とな。事の詳細は知らんが、」
やや困ったような顔で頭を掻きつつ、小平太が言う。
「すぐ出頭しないと山本先生のお怒りが増すのだけは確かだ」
文次郎の顎ががくっと落ちた。それから一分(いちぶ)刻みに元の位置に戻り、かと思うと、また開いた。
「俺が何をしたってんだ!!」
悲痛な程の叫びを残し、地面を蹴って落盤した穴から地上へ飛び出すと、文次郎は瞬く間に風を巻いて姿を消した。
「……とりあえず、潮江先輩があの姿をしておられた理由は分かりましたが……、七歳の女の子が真白な化粧に差し紅をしていてもギョッとしますね」
引っ込んでいた奥の方から漸くぞろぞろ出て来た体育委員を横目に三木ヱ門が呟くと、小平太は難しい顔でつるりと頬を撫でた。
「豊穣の祭の神事で、七歳の子が化粧をすることで、十七歳に成長したことにするんだそうだ。その化粧を十五の男がしてるんだから、二重三重に倒錯してしっちゃかめっちゃかだなあ」
そう言うと小平太は自分の頬に手を当て、三木ヱ門と疲労困憊している滝夜叉丸の2人の四年生を交互に見て、不思議そうに尋ねた。
「しかし女のひとと言うのは、年に関わらず白い肌に憧れるものではないのか?」
「白さにも限度があります」
ライバル同士の声が、この時は一致した。




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