災難に遭いやすい、そして影が薄い、とふたつながらに不運をかこつ数馬の意外な一面を見た気がして、三木ヱ門はふと、閉じた出入口の方を気にしている伊作に目を留めた。
そうか。数馬は左門と同じ三年生だけど、保健委員会では上から二番目なんだっけ。
「あのさ、僕はまだこの場にいないといけないかな。廊下の後始末をしたいんだけど」
訊問の対象は久々知に移ったなら僕はもうお役御免でいいよね? と、伊作は目に見えてそわそわし始めた。
患者が使ったお椀を熱湯消毒するくらいだから、廊下にも消毒液を撒くくらいのことはするのだろう。しかし向こうは数馬がうまく指揮をするのではないですか、と三木ヱ門が言おうとするのに先んじて、文次郎がぴしりと言った。
「居ろ」
「えー」
「えー、じゃな……」
言いさして、文次郎はコンコンと乾いた咳をした。腰を浮かせる三木ヱ門を片手を上げて制し、その手で自分の首を指し「これの話が残っている」と言う。
「頸動脈?」
「喉だ、のど。不破が居眠りする前に外のやつらは本当に風邪なのかと怪しんでたのを、まさか忘れてねえだろうな」
そういえばそんな会話があった。廊下に溜まる患者の群れを覗き見た雷蔵にそう尋ねられて、伊作はちょんとつついた過冷却水のように、見る間に凍りついてしまったのだ。
「あれは――だけど、不破のうわ言だろ。風邪っぽいけど不破にはそう見えなかったってだけで」
「え、うわ言なんて言うほど雷蔵のやつ具合が悪いんですか。あいつも医務室に来たんですか?」
伊作の抗弁に兵助が食いついた。