お前を信用している――という言葉に甘えて色々と割愛し過ぎだろうかと、その反応に少し不安になる。
「怒ってないぞ」
「ふぇっ」
変な声を上げてびくっと体が跳ねた三木ヱ門をよそに、仙蔵はにわかに渋面になった文次郎に「そうだろう?」と同意を促す。
「そんなもんいちいち言うことじゃねえ」
「へえ。以心伝心の自信があるのか」
「……お前、本当にもう帰れよ」
うんざりした様子で文次郎が呻く。仙蔵が居座るのは真相解明にかかる知的好奇心なのか単なる野次馬なのか、あるいは同室の同級生をからかい倒したいだけなのか、三木ヱ門にも今ひとつ分からなくなってきた。
その時、薬湯待ち患者は出入り禁止で閉め切っていた出入口の障子戸ががたがたと開いた。
「伊作先輩ー。みんな、薬を飲み終わりましたー」
戸口からは衝立のこちら側にいる伊作は見えない。その姿を探すように数馬の声が大きく呼びかける。
伊作はお盆を抱えたまま、衝立の陰からひょいと首を突き出した。
「ご苦労さま。使ったお椀はそのまま井戸へ持って行って、よく洗っておいてくれ」
「熱湯消毒もしますか?」
「うん。そうして」
「分かりました」
歯切れのいい返事の後にもう一度がたがた戸の閉まる音がして、数馬が廊下で下級生たちに指示を出しているらしい声がぼそぼそと聞こえて来る。
しっかりしている。