「久々知、頭は大丈夫?」
ところで何故俺は医務室にいるのだろうと首をひねっている兵助に、また紛らわしい言い方で伊作が尋ねる。
「それは中身がですか。それとも外側ですか」
「ああ、君はそう来るか」
真顔で問い返す兵助に苦笑して「両方」と伊作が言うと、兵助は後頭部をひと撫でして、自分の頭の中を覗くようにくるりと目を動かした。
「今はすっきりしてます――でも、どうしてここに体育座りで寝ていたのか覚えていません。私は自分でここに来たんですか」
「いや、綾部が引きずってきた。それより頭は痛くない? 内側の頭痛でも、打撲痛でも」
「それは大丈夫です。……引きずって?」
その問答を耳にしつつ、ふらつきながらようやく上体を起こした文次郎が「この石頭」と口の端で愚痴る。
頭突きで木の幹を抉る人にそうと言われたくはないだろう、と三木ヱ門はちらりと思った。してみるに、木の強度に打ち勝つ文次郎の頭部を一撃で無力化した兵助は、確かに石頭なのかもしれない。
そんなことを考えていたら無意識に諧謔が口をついた。
「豆腐の角に――」
「ん?」
素早く振り返った兵助とまっすぐに目が合う。
――頭をぶつけて死んじまえ、という物騒な後半の文句は口の中でもぐもぐとごまかして、その代わりに「寝起きに申し訳ありませんが」と兵助に向き直った。
「二、三、質問があります」
何気ない仕草のふりをして、は組の教室で兵助に抑えられた首の後ろにちょっと手を当ててみせると、訝しげにしていた兵助の表情が一瞬動いた。