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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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居ながらにして「手のもの」のすずめで情報を収集していたらしい仙蔵は、確かに、当事者が語るより前からあれこれの事柄を承知しているのだろう。医務室へ入ってくる前に喜八郎と話をしたのなら、その中で「三木ヱ門が忍雀の存在を知っている」と聞かされていて不思議はない。
だからって、鷹狩りの鷹の代わりに鍛えたすずめが困ったことに優秀な諜報員になりました――、なんて、伊作も左吉も(ついでに兵助も)いる場で簡単に言えるものか。知らないうちに見られているなんて良い気のするものじゃないからあまり吹聴しないほうがいい、と言ったのは三木ヱ門自身なのだ。
首をカタカタと傾け心底困った顔でしきりに瞬きする三木ヱ門の姿に、文次郎は一瞬険しく眉を寄せたものの、すぐにふっと肩の力を抜いた。
「言えねえ話か」
お前が飲み込んだ話のひとつかと、言外に問いかけてくる。
「では、ない、のですけど……ひと口に話し難くはあります」
「なら今はいい。それより――」
「へぇ~え?」
伊作に向き直る文次郎の機先を制し、さっきの二倍語尾を伸ばして今度は伊作と仙蔵が声を揃えた。伊作がお盆を立てたままずるずると仙蔵に這い寄り、二人で目引き袖引きしながら、隠す気のない声量でひそひそ話を始める。
「聞いた? 見た?」
「聞いた。見た。曖昧な物言いを容赦したな」
「あの文次郎が」
「あの裏表なしの直情径行が」
「あの自他に厳しい地獄の会計委員長が」
「あの骨を割ると髄に正心が詰まっている男が」
言いたい放題に言いながら、ちらりちらりと文次郎の方を窺う。
が、口元を曲げてこれ以上ないくらいのしかめっ面をしながらも、文次郎はじっと黙っている。その反応の無さに仙蔵が飽きて「あの――」の応酬が止まると、「話を続ける」と低い声で一言告げた。

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