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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「"三ヶ月"が鍵なんですね。三ヶ月……」
したたかな笑い顔をする伊作とそれを斜に見る文次郎には構わず、ふむふむと頷きながら左吉が復唱する。
蜜漬けの体力増強剤は、人が服用すると三ヶ月の間効果が続く。
蜜漬けの体力増強剤は、なにもしないで放っておけば、三ヶ月で薬の成分が薄れてただのおやつになる。そう説明をつけた上で生物委員会の手に渡り、今もそこにある。
ただし三ヶ月経つ前に誰かが口に入れてしまったら殆ど毒に等しい"薬"として作用するので、薬種の販路を遮断されたり留三郎に絶交されたりするのを避けたい伊作としては、今すぐ回収したい。
「まとめるとこういうことですね」
まっすぐ左吉に見上げられた伊作が、その瞳の真摯さが眩しいかのように目を細くする。
「いやあの、勿論、一番の理由はみんなの健康が心配だからだよ? どんな拍子に人の口に入るか分からないし、いくらでも身体が動くとなったら際限なく動き続けるのがいるから」
「ちょっと待て、そう言えば小平太は大丈夫なのか? ここ最近の奴はヒトの活動限界を超えてるって聞いたぞ」
「んー……ひと月前に漬けてあった木の実をひとつ囓った、というのが本当なら、そんなに深刻な事にはならないと思う。木の実は蜜の方へ成分が滲み出したあとの出がらしだし、煮詰める前の蜜は、ひと口くらいじゃ大した効果は出ないはずだ」
「じゃあ等身大の地下道をひとりで掘ったとか、長屋の廊下をぶち抜いて飛び出したとかいうのは……」
「大部分が自力、プラスアルファで薬の効果、ってとこかな。元々の体力が桁違いだから少量でも抜群に効いたのかも」
手で土を掻く真似をしながら伊作が言う。
文次郎は床に突いて肘を乗せたお盆をかたかた揺らし、悔しそうに口を尖らせた。
「似たような鍛錬してんのにな……似たような、じゃ駄目なのか」
「会計委員会まで穴を掘るようになったら、食満先輩の胃に穴が開いてしまいます」
恐る恐る進言する左吉に「やらねえよ」と無造作に言い返して、文次郎はじろっと伊作を睨む。
「で? 竹谷に薬を返せと言い出せなくて、なんで屋根の上まで追いかけ回す事態になったって?」
「……それは、えーと……もう少し穏やかな効き目に改良したいと言ってみたら、壷ごと返してはくれたんだ」

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