「……え、見てたの?」
質問返しが肯定になっている。
が、こちらは隠すつもりはないらしい。屋根の上なんて駆け回ってたらそりゃ目立つよねと一人合点している。
「善法寺先輩の姿はお見かけしていませんが、竹谷先輩が転がり落ちて来た下に私と左門がいました」
今日の天気は晴れ、所により竹谷先輩。
そんなことを左門が言い、一体何事かと思っている間に、地面の上を逃げ惑う八左ヱ門めがけて石礫が降って来た。そして八左ヱ門はその攻撃者に向かって「それも忍術です」と叫んでいた。
では、優しくて面倒見が良いと評判の伊作の怒髪天を衝かせ石を取らせた、八左ヱ門の言う「それ」とは何なのか。
「置くと言ったばかりで何ですが、生物委員会から"鼻薬"を受け取る一方で、委員長代理とやり合っていたのは何故です? 価格や品質に偽りがあったのですか」
「あー……ねえ。"鼻薬"のことは、そっちは問題ないんだ」
「無い訳じゃねえけどな」
言いづらそうにする伊作に文次郎がくちばしを入れる。
支給する予算が変わっていないのに医務室には大量の薬草があるということは、以前より安価に買えるようになったということで、その点について今月の収支報告書を精査する必要が大いにある。今後の予算編成にも再考の余地がありそうだ。
伊作がちょっと傾いた。
「勘弁してくれよ……。ええと、薬草の方は竹谷もちゃんと約束を守ったし、先方も間違いのないものを提供してくれてる、んだけど、その、薬が、ね、問題が出て来て」
「その薬って……、もしかして、体力増強剤の薬のことですか」
「あたりぃ」