落ち着かなげに続きを促す伊作を三木ヱ門がそうかわすと、「自白したほうが罪が軽くなるのかな?」と自虐的な軽口を叩いて、伊作は顎に手を当てた。
「うーん……」
ありがたい仏像の半跏思惟像に似たポーズだが、眉間にしわが寄った渋い表情と相まって、只今熟考中と言うより歯が痛くて唸っているように見える。
何気なく姿勢を変える動きに紛らわせて、文次郎が肘で軽く三木ヱ門を突いた。
三木ヱ門も気付いている。
――語るに落ちている。
自白うんぬんの冗談が出るということは、罪に問われるような――その言い方が大げさなら、少なくとも人に知られたら咎められるようなことをやらかしていると、認めたも同然だ。
屋根から落ちたり落とし穴に落ちたりするだけでは飽き足らず……と少々意地悪いことを考えながら悩む伊作を見守っていると、「人」から「入」へずるずると体勢を入れ替えた雷蔵と兵助のどちらかが、不意にくしゃみをした。
「井戸水をかけ合ってたんだっけか、こいつら。この寒いのに」
くすんくすんと鼻を鳴らす音の出所を探すように二人を交互に見て、文次郎は片手で頬をこする。
「本当に風邪をひいたんじゃないのか」
「服を乾かして薬湯と生姜湯を飲ませたから、心配ない」
「もしもの時は"鼻薬"もあるし?」
文次郎が言うと、保健委員の顔で五年生たちを見回していた伊作が嫌そうな表情をした。
その表情がすぐに崩れて諦め顔になり、衝立で遮られた背後にある薬棚の方を肩越しに見遣る。
「そうだね……うん。もし二人がひどい鼻風邪にかかっていたら、鼻薬で鼻薬を作るよ」