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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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かこん。
お盆と床板がぶつかり合って硬い音を立てる。
む、と口をへの字にして顎を引いた伊作を見たまま、「田村」と文次郎が声を掛ける。
「小平太が廊下をぶち破った話を聞かせてやれ」
「はいっ」
返事をして三木ヱ門がつと膝を進めると、伊作はまず目だけ動かしてそちらを見て、それからじわりと首を巡らせた。
見ているだけで肩が凝りそうな緊張感がみなぎっている。それを見つめながら三木ヱ門は話し出した。
「今日の放課後、地下を掘り進んできた七松先輩が長屋の廊下を下から破りました」
「……あいつ最近、前にも増して元気だからね。鍛錬の効果だよね」
「ええ、それもあるのでしょう。下級生たちが言うには、このひと月あまり、七松先輩の体力がいよいよ人間離れして来たという話で――これはご本人から聞いたのですが、七松先輩は一ヶ月ほど前、医務室の隅にあった蜜漬けの壷から木の実をひとつ失敬したそうです」
三木ヱ門がそう言うと、笑っているような曖昧な表情を作っていた伊作の顔の部品がばらばらに動いた。右眉が下がり、左眉は上がり、目は細められ、口は開いたのち尖って、鼻にぎゅっとしわが寄る。
「その蜜漬けは、」
以前に三郎がした奇妙な変装(と言うよりイタズラ)で、これといった特徴のない造作の顔を十秒間見ていると突如として目鼻口の位置が勝手にずれていく、というものがあった。今の伊作の顔はそれに似ているなと思いながら、三木ヱ門は続ける。
「生物委員会が都合してきた貴重な薬草を用いて、生物委員会の依頼を受けて作られたものだと――こちらは竹谷先輩に伺った話です」
「八左ヱ門?」
兵助と並んで体育座りで控えていた雷蔵が、級友の名前に反応してきょとんと首をかしげる。
「八左ヱ門はいま忙しい……よ」
「さっき会った。確かに忙しそうだ。報告ありがとうよ」
いいから寝てろと文次郎に手を振られた雷蔵は、素直に抱えた膝頭に額を付けた。
「近頃の八左ヱ門は秘密主義だ……」
「ん?」
雷蔵にならって顔を伏せた兵助が呟いた。

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